会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

ライブ・エンタテインメント業界人必読!
コンサートプロモーターが今、読むべき本を毎号紹介します。

書籍名:想像ラジオ

著 者:いとうせいこう

出 版:河出書房新社


3.11後の想像力と創造力

今号の連載対談では、中西健夫ACPC会長が東日本大震災後の芸術、エンタテインメントの役割について、書家の紫舟氏と語り合っている。あの圧倒的な現実を経験して、多くのアーティストやクリエーター、そしてライブ・エンタテインメントに携わるコンサートプロモーターは同じように「自分たちに何ができるか」と考えただろうし、震災から2年以上が経った今も、その問いかけは続いている。いとうせいこう氏も自身の役割を問い直した一人であり、本書は(直接的にはそう明示されていないにせよ)震災を題材に氏が16年ぶりに発表した小説作品である。

物語は主に「想像ラジオ」を通して語りかけるDJアークのモノローグで構成されている。想像ラジオとは、想像することで聞こえてくるラジオのことで、それ自体がもちろん想像の産物だが、現実離れしたフィクションが介在することで、生者と死者、死者と死者をつなぐ物語が生まれ得ることを本書は示している。また、本書が出版不況にもかかわらず10万部を突破したことで、人々はやはり「現実」以外の表現も求めているのだということを証明したのではないだろうか。

読後に涙が止まらなくなる作品であると同時に、芸術やエンタテインメントに関わる人間にとっては、想像力と創造力の可能性を信じ続ける勇気をもらえる一冊である。


関連記事

[AUTUMN.2017 VOL.35] MUST BOOK 私説 大阪テレビコメディ史 花登筺と芦屋雁之助

[SUMMER.2017 VOL.34] MUST BOOK ビートルズを呼んだ男

[SPRING.2017 VOL.33] MUST BOOK BRUTUS 2017年4月15日号

[WINTER.2017 VOL.32] MUST BOOK 誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち

[AUTUMN.2016 VOL.31] MUST BOOK 60年代ポップ少年

[SUMMER.2016 VOL.30] MUST BOOK コンサートという文化装置 交響曲とオペラのヨーロッパ近代

[SPRING.2016 VOL.29] MUST BOOK 新・マスメディア時代のポピュラー音楽を読み解く

[WINTER.2016 VOL.28] MUST BOOK 新・観光立国論

[AUTUMN.2015 VOL.27] MUST BOOK ルポ風営法改正 踊れる国のつくりかた

[SUMMER.2015 VOL.26] MUST BOOK 台湾の歓び

[SPRING.2015 VOL.25] MUST BOOK ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ

[WINTER.2015 VOL.24] MUST BOOK 江戸の幽明 —東京境界めぐり

[AUTUMN.2014 VOL.23] MUST BOOK 英国一家、日本を食べる

[SPRING.2014 VOL.22] MUST BOOK 大韓ロック探訪記

[WINTER.2014 VOL.21] MUST BOOK ジュリスト 2月号

[AUTUMN.2013 VOL.20] MUST BOOK THE SHOOT MUST GO ON 写真家鋤田正義自らを語る

[SPRING.2013 VOL.18] MUST BOOK ラジオのこちら側で

[WINTER.2013 VOL.16] MUST BOOK メインストリーム 文化とメディアの世界戦争

同じカテゴリーの記事

[AUTUMN.2017 VOL.35] TALKING BLUES

[AUTUMN.2017 VOL.35] 私説 大阪テレビコメディ史 花登筺と芦屋雁之助

[AUTUMN.2017 VOL.35] チケット定価再販サイトでネットダフ屋対策が進むアメリカ

[AUTUMN.2017 VOL.35] この地域 この問題 ISSUES IN THE AREA.

[SUMMER.2017 VOL.34] TALKING BLUES

[SUMMER.2017 VOL.34] MUST BOOK

[SUMMER.2017 VOL.34] navi STUDY

[SUMMER.2017 VOL.34] 公式チケットトレードリセールサービス 「チケトレ」が6月1日に正式オープン

[SPRING.2017 VOL.33] TALKING BLUES

[SPRING.2017 VOL.33] MUST BOOK

もっと見る▶