地方から日本のエンタテインメントを届けるプロモーターの責任、マネージャーの発想
撮影:宇都宮輝(鋤田事務所)
「マネージャーには自分と同じ志と熱意を持っているプロモーターさんを探してきて欲しいんですよ」(相馬)
「マネージャーもプロモーターも、アーティストごとに対応できるスキルを持っていないと通用しません」(中西)
アミューズの「エンタテインメントの総合企業」としての存在感は、年々増していると言っていいでしょう。国内トップ・アーティストが多数所属し、映画からドラマ、舞台まで幅広く活躍する俳優陣も多数所属。マネージメント・ビジネスだけではなく、エンタテインメントに関するあらゆる可能性に着手し、海外へのネットワークも広げてきたのが、アミューズの歴史でもあります。今号のゲストとしてご登場いただいた相馬信之さんは、主に音楽部門を担い、同社とコンサートプロモーターのパートナーシップの要といえる存在。中西健夫会長との対話からは「マネージャーとプロモーターが今、話し合うべきリアルな問題」が次々に浮かび上がりました。
中西:今日、相馬さんと対談させていただきたいと思ったのは、音楽業界における会社の枠組みたいなことを、改めて考えてみたいと思ったからなんです。アミューズさんは、面白いことをどんどん手がけていく姿勢がありつつ、しっかり収益を上げることも視野に入れていると思います。業態としても、プロダクションであり、レコード・レーベルであり、以前から海外にも拠点を持っていて、実に様々な顔があります。いわば業界の枠組をボーダレスにしてきたパイオニアのような存在ですから、相馬さんにお話を伺うことで、僕らもこれからのプロモーターの在り方を探れればと。
相馬:弊社は今年で創立38年目を迎えます。ベースにあるのは音楽プロダクションですから、もともとはアーティスト・マネージメントを中心に、コンサートやレコード/CDを製作して売っていくビジネスを根幹に、大切なパートナーであるレコード会社の方々と二人三脚でやってきた時代からスタートしています。ご存知の通り、その後CDの売上が減少していき、作品のリリース形態が多様化していく中で、プロダクションも時代の変化に対応する必要が出てきました。自社のアーティストをどうやって守っていくかを考えると、自分達でレーベルを立ち上げるべきだとか、自然に手がけるべき業務が広がっていきます。結局、時代に応じて「これもやっておかなきゃいけないな」とか「うちの会社ってこれが足りないよね」と模索していくことの積み重ねだったと思います。
中西:レコード会社、プロダクション、コンサートプロモーターといった旧来の枠組にこだわらない会社が増えていることは確かですよね。じゃあ、アーティストに関わる各社の役割分担がどうなっていくかといえば、これはアーティストごとに変わると思います。案件ごとに適した組み立てを考えることが大事になってきているんじゃないでしょうか。
相馬:例えば僕達がKDDIさんと一緒に立ち上げたA-Sketchは、あくまでドメスティック・レーベルなので、ワールドワイドな展開を望むアーティストであれば、世界三大メジャーといわれる会社とパートナーシップを組ませていただく可能性もあります。自社にレーベルがあったとしても、アーティストによっては既存のレコード会社さんとの関係が今後もより重要になる場合もあります。
中西:プロモーターとの関係も、やはりケース・バイ・ケースですよね。
相馬:うちの場合、プロモーターさんとのお付き合いは、マネージャーがかなりの部分で決定権を持っています。各マネージャーが自分の担当しているアーティストを、どう売り出して、どう育てていくか、同じ志と熱意を持っているプロモーターさんを自分の嗅覚で探してきて欲しいんですよ。変な話、僕と中西さんとの関係を、そのまま現場に引き継がせることもないですよね?
中西:ないですね。昔はAというプロダクションのアーティストは、自動的にBというプロモーターが担当するという流れがあったと思います。会社同士の関係ですべてが決まっていくなら、現場もある意味では楽かも知れませんが、今はそういった前提が崩壊しているのが現実です。やはりアーティストごとにプロモーションを考えていかないと、きめ細かい対応ができませんし、それができないと通用しない時代です。アーティストの音楽性も年齢も、幅広くなっていますから。10代のアーティストと60代のアーティストでは、やりたいことが違うのは当然です。マネージャーもプロモーターも、アーティストごとに対応できるスキルを持っていないと、有効なプロモーションができないでしょう。
相馬:自分達なりのやり方を見つけないと、仕事をしていても面白くないですしね。
中西:本当にその通りですよ。だいたい僕らくらいの50代の人間が、SNSのプロモーションをプランニングしろといわれても、感覚的についていけないと思うんです。もちろん普段は分かったふりをしているんですが(笑)、皮膚感覚では理解できていないから、本当は無理。だったら夜中にお酒を飲みながらコミュニケーションをとって、新しいアイディアを考えたほうがいい。逆にそれは今の若い人がやっていないことですから。