会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

有明アリーナから始まる「観客文化」の育成 スポーツ界と音楽業界のコラボレーション

撮影:宇都宮輝

「コンサートもスポーツ観戦もすべてはエンタテインメント。常に観客の目線でアリーナの在り方を考えていきたい」(中西)
「昔ながらの体育館文化ではなく、スポーツ界にとっても観客文化が一番大切」(川淵)

「リーダーシップ」という言葉を聞いて、川淵三郎さんの存在を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。初代チェアマンとして1993年にJリーグを創立。その後も日本サッカーの競技レベルを格段に引き上げつつ、地域に密着したクラブ文化・サポーター文化を育て、近年は男子バスケットボールのプロリーグ、B .LEAGUEの立ち上げにも尽力。サッカー、バスケット、バレーボール、ハンドボール、ラグビーなどのボールゲーム9競技と、日本最高峰の13リーグの競技力向上と運営の活性化を目指す日本トップリーグ連携機構の代表理事会長を務めていらっしゃいます。80歳を迎えても精力的に行動し、常に自分の言葉で発言、日本のスポーツ界を牽引する「キャプテン」のイメージは今も全く変わっていません。
昨年、そんな川淵さんの発言によって、中西健夫ACPC会長が一気に注目された出来事がありました。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に、バレーボールを行う会場を新設予定の有明アリーナから横浜アリーナに変更する案が浮上したことに対して、日本トップリーグ連携機構が強い反対の意向を10月26日付で表明。以降、多数の取材を受けた川淵さんは、ともに有明アリーナの建設を目指す同志的なキーパーソンとして、中西会長の名を挙げたのです。以降、中西会長も期せずしてメディアから追われることになりました。新年号の連載対談では、川淵三郎さんにご登場いただき、発言の真意を明かしていただきました。また、スポーツ界と音楽業界の深い協力関係がスタートする、記念すべき第一歩が記された場にもなりました。

なぜ中西会長の名を挙げ協力を要請したのか

川淵:もともと私達は競技団体として、有明アリーナは絶対に必要だと考えていたんです。これまでの日本には、スポーツを観る側の視点を取り入れて建設されたアリーナがありませんでした。有明アリーナを日本で初めてそういった会場にできると思っていたんです。バスケットやバレーボール、ハンドボールなどの競技のアリーナ文化を育てていくためには、ぜひ必要だと考えていましたし、有明アリーナの建設がその第一歩になると。ところが、東京オリンピック・パラリンピックに向けての一連の騒動で、税金の無駄遣いだという意見ばかりが目立ってしまって……日本トップリーグ連携機構が会見を開いて以降、私のところにもありとあらゆる批判が届きました(笑)。でもね、私達は各アリーナの使用状況をすべて調べた上で「横浜アリーナじゃダメ、有明アリーナを新設するべき」という結論に達していたんです。例えば代々木第一体育館は、約126日がスポーツで使われていて、203日は色々なイベントが開催されているというバランスなんですが、他のアリーナのほとんどはコンサートを開催することで経営が成り立っているんです。今までも漠然とそういった状況を把握していたつもりでしたが、改めて調べると横浜アリーナも、さいたまスーパーアリーナもみんな音楽イベントがあるから黒字になっていた。となると有明アリーナについても、我々が一緒に話を進めるべきなのは音楽業界、コンサート業界の方々なのではないかということになり、行き当たったのが以前から会議でご一緒していた中西さん
だったわけです。

中西:川淵さんとはチームスマイル(PIT建設・運営などを行っている震災復興支援のための一般社団法人)でご一緒させていただいていましたよね。

川淵:チームスマイルの会議に出席して、中西さんの発言を聞いていると、音楽業界でどれだけ重要な役割を果たしている方か分かるわけですよ。でも、今回の騒動の中でまたご一緒できるとは、夢にも思っていなくて(笑)、つい音楽業界にはコンサートプロモーターズ協会という団体があって、中西さんという方がいて……と言わずもがなのことを取材で口にしてしまいました(笑)。それは中西さんとは縁があるなと思っていたからなんです。

中西:僕らは当初から有明アリーナの民設民営の可能性を強く東京都にお伝えしていたんです。今回の報道で疑問を持ったのは、建設費ばかりにフォーカスが当たり、アリーナをオリンピック以降どう利用していくかに触れるメディアがほとんどなかったことです。

川淵:そう、中身のことは話題にならない。

中西:「無駄遣いだ」という意見ばかりになって、横浜アリーナ案が浮上するという事態になりました。川淵さんがおっしゃった各アリーナの会場の利用実態を、少しでも把握していれば、そんな意見は出ないはずです。最終的には有明アリーナの建設が決まり、民営に向けた流れ(コンセッション方式=国や自治体が所有権を保有したまま、事業に関する権利を民間に売却、運営については独立採算にする)もできましたので、逆風の中で川淵さんが強く発言してくださって本当に良かったと思います。これからやらなくてはいけないことは多いですが、スタートとしては理想的です。

川淵:我々こそ中西さんから大きな力をいただけて、本当に助かりました。


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