会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

私達は何を思い、何のために
MUSIC AWARDS JAPAN 2025を開催したのか

取材・構成:君塚太
撮影:小山昭人(FACE)
収録日:2025年6月12日

本誌でも、徐々に決定していくオフィシャル情報をお届けしてきたMUSIC AWARDS JAPAN(MAJ)2025が、5月18日から22日にかけて開催されました。主催者は、こちらも何度かお伝えした通り、音楽5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、ACPC、日本音楽出版社協会)が集結し、新たに設立したカルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)。今回が初開催だっただけに、CEIPAに参加する団体の会員各社の間でも当日が近づくにつれ期待が高まりつつ、一方ではどんなイベントになるのか明確には見えてこない状態だったと思います。では、実際にその全貌が明らかになったMAJは、どんな姿をしていたのでしょうか。開催地である京都を訪れ、会場で体験した方、授賞式を放送・配信でご覧になった方からは、どんな反応があったのでしょうか。京都滞在時の高揚がまだ残るタイミングでしたが、野村達矢MAJ実行委員会委員長(日本音楽制作者連盟理事長/CEIPA理事)、稲葉豊同副委員長(日本音楽出版社協会会長/CEIPA理事)、CEIPAでは副理事長を務める中西健夫ACPC会長が鼎談で実感を語り合い、次回開催へ向けた冷静な分析にまで話は及びました。

伝わった「公正」「透明性」

――MAJが無事終了して、現在の率直な気持ちをお聞かせください。

中西:立ち上げから携わっているメンバーも、当初は果たして開催できるのかなという気持ちがあったと思います。日本の音楽シーンがどのようになっていったらいいのか、根本的な問題から話し合っているうちに実現が見えてきて、最終的に本当によくできたなというのが正直な気持ちです。音楽5団体が結集して、一つのものをつくり上げていくことは初めての試みだったので、それを実現できたということは、未来に向けたキックオフになると思いますし、もちろん様々な評価があるとは思いますが、少なくとも音楽ファンの皆さんには我々の意図は届いたんじゃないかと考えています。

野村:初回がこうして終わってみて、各所の反応を見ていると、僕らがやろうとしたことは音楽業界からも、音楽ファンからも必要とされていたんだなと感じることができ、うれしかったですね。グローバルであったり、公正で透明性のあるアワードの選出方法であったり、そういうことを実は皆さんも求めていたんだと伝わってきました。それと何より日本の音楽業界が世界に向けて一つにまとまったことを周知できただけでも、大きな意味があったと思います。

稲葉:MAJは授賞式だけにとどまらず、ライブ・イベントがあり、カンファレンスがあり、パーティーやレッドカーペットもあるという形になったわけです。MAJの構想を話し合い始めた当初、詳細な具体案があったわけではありませんが、もともとアワードの授賞式を生中継するだけにとどまらない立体的なものを、というイメージはありましたので、それを1年目から提示できて良かったと思います。今後は運営の緻密さを上げていったり、さらに立体感を高めていくかどうかを検討できればと思います。

――「公正」「透明性」というキーワードが挙がりましたが、授賞式の運営を含めると、簡単なことではありませんよね。

野村:現実的に言えば、とても、とても大変です(笑)。授賞式にアーティストをお呼びするにしても、受賞の有無はプレゼンターの方が壇上で発表するまで本当に分からない状態でのご依頼・交渉になります。初回ということもあって、まだどんなアワードになるかも想像がつかないのに、京都まで行って授賞式の席に座るところまでご理解いただくのは非常に難しかったですね。授賞式当日でも、番組の構成上、通常であれば決まっていることが決まっていないわけです。誰をどこでカメラに写すのか、何が起きるのか分からないまま、生放送を時間枠の中に収めつつ進行するので、相当厳しい現場であったことは事実です。とはいえ、それらの不確定要素があっても生放送・配信したことで、「これ、本当にガチなんだ……」という臨場感が伝わったとは思います。いや、でも本当に大変は大変でしたね(笑)。

――授賞式以外でも、CEIPAの開催意図はご協力いただいたパートナーの方々にもご理解いただいていたということですね。

稲葉:トップ・パートナーのTOYOTA GROUPさんをはじめ、皆さんと一緒にゼロからつくり上げていくテンションの中で進んでいったので、なんとかなったのかなと思います。セミナーやカンファレンスをやっていただいたYouTubeさんやSpotifyさんは、僕らが「こういうイメージで開催したいんです」とお話しした時に、先方から「それであれば、こんなことをやりたい」と新たな投げかけもしてくださったので、成立させることができた経緯もあります。

中西:それと京都の方々とも一緒につくり上げたという気持ちがあります。開催地を東京から離れた京都にしたことで課題が山積みになりましたけれど、京都だったからこそMAJの開催意図が初回から明確に伝わったと思います。開催地は大きなポイントでした。

――会場に訪れた方々にとっても、こんなアワードが本当によくできたなというのが実感だったと思います。

中西:奇跡ですよ。

野村:奇跡です。

稲葉:奇跡ですね。


関連記事

[SPRING.2025 VOL.55] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.39 依田巽(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会会長)

[WINTER.2025 VOL.54] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.38 髙田旭人(株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEO)

[AUTUMN.2024 VOL.53] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 37 村松俊亮(一般社団法人日本レコード協会会長)

[SUMMER.2024 VOL.52] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.36 小林武史(音楽プロデューサー)

[SPRING.2024 VOL.51] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 35 松本隆(作詞家)

[AUTUMN.2023 VOL.50] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 34 さだまさし(シンガー・ソングライター、小説家)

[AUTUMN.2023 VOL.50] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 33 島田慎二(B.LEAGUE チェアマン)

[SUMMER.2023 VOL.49] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 32 檜原麻希(株式会社ニッポン放送 代表取締役社長)

[SPRING.2023 VOL.48] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 31 横田健二(日本舞台技術スタッフ団体連合会 代表理事)

[WINTER.2023 VOL.47] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 30 都倉 俊一(第23代文化庁長官)

[SUMMER.2022 VOL.46] 中西健夫ACPC会長連載対談 SPECIAL 音楽4団体座談会

[SPRING.2020 VOL.45] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 28 大宮エリー(作家/画家)

[WINTER.2019 VOL.44] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 27 髙田旭人(株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEO)

[AUTUMN.2019 VOL.43] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 26 村井満(日本プロサッカーリーグ理事長/Jリーグチェアマン)高木美香(経済産業省コンテンツ産業課長)

[SUMMER.2019 VOL.42] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 25 野村達矢(一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事長/株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション代表取締役社長)

[SPRING.2019 VOL.41] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 24 石破茂(自由民主党衆議院議員/ライブ・エンタテインメント議員連盟会長)

[AUTUMN.2018 VOL.39] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 23 後藤 豊(フォーライフミュージックエンタテイメント代表取締役社長)

[SUMMER.2018 VOL.38] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 22 梅澤高明(A.T. カーニー 日本法人会長)

[WINTER.2018 VOL.36] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 21 桑波田景信(一般社団法人日本音楽出版社協会会長)

[AUTUMN.2017 VOL.35] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.20 湯川れい子 音楽評論家・作詞家

[SUMMER.2017 VOL.34] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.19 平田竹男 内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局長

[SPRING.2017 VOL.33] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.18 栗花落 光(株式会社FM802 代表取締役社長)

[WINTER.2017 VOL.32] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.17 川淵三郎(一般社団法人 日本トップリーグ連携機構代表理事 会長)

[AUTUMN.2016 VOL.31] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.16 松田誠(一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会代表理事/株式会社ネルケプランニング代表取締役会長)

[SUMMER.2016 VOL.30] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.15 斉藤正明(一般社団法人日本レコード協会会長/株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント代表取締役社長)

[SPRING.2016 VOL.29] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.14 楠本修二郎(カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長)

[WINTER.2016 VOL.28] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.13 門池三則(一般社団法人日本音楽制作者連盟理事長/株式会社バッド・ミュージック代表取締役社長)

[AUTUMN.2015 VOL.27] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.12 岸谷 香(シンガー・ソングライター/元プリンセス プリンセス ヴォーカル)

[SUMMER.2015 VOL.26] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.11 朝妻一郎(一般社団法人日本音楽出版社協会顧問/株式会社フジパシフィックミュージック代表取締役会長)

[SPRING.2015 VOL.25] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.10 相馬信之(一般社団法人日本音楽制作者連盟理事/株式会社アミューズ常務取締役/株式会社A-Sketch代表取締役社長/株式会社TOKYO FANTASY代表取締役社長)

[WINTER.2015 VOL.24] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.09 堀 義貴(一般社団法人日本音楽事業者協会会長/株式会社ホリプロ代表取締役社長)

[AUTUMN.2014 VOL.23] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.08 加藤友康(カトープレジャーグループ代表取締役兼CEO)

[SPRING.2014 VOL.22] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.07 亀田誠治(音楽プロデューサー/ベーシスト)

[WINTER.2014 VOL.21] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.06 大石征裕(日本音楽制作者連盟 理事長)

[AUTUMN.2013 VOL.20] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.05 為末 大(元プロ陸上選手)

[SUMMER.2013 VOL.19] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.04 紫舟(書家)

[SPRING.2013 VOL.18] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.03 加藤裕一(株式会社レコチョク 代表執行役社長)

[SPRING.2013 VOL.17] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.02 中西大介(日本プロサッカーリーグ理事)

[WINTER.2013 VOL.16] 中西健夫ACPC会長連載対談 vol.01 ゲスト 尾木徹(日本音楽事業者協会 会長)

同じカテゴリーの記事

[SPRING.2025 VOL.55] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.39 依田巽(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会会長)

[WINTER.2025 VOL.54] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.38 髙田旭人(株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEO)

[AUTUMN.2024 VOL.53] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 37 村松俊亮(一般社団法人日本レコード協会会長)

[SUMMER.2024 VOL.52] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol.36 小林武史(音楽プロデューサー)

[SPRING.2024 VOL.51] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 35 松本隆(作詞家)

[AUTUMN.2023 VOL.50] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 34 さだまさし(シンガー・ソングライター、小説家)

[AUTUMN.2023 VOL.50] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 33 島田慎二(B.LEAGUE チェアマン)

[SUMMER.2023 VOL.49] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 32 檜原麻希(株式会社ニッポン放送 代表取締役社長)

[SPRING.2023 VOL.48] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 31 横田健二(日本舞台技術スタッフ団体連合会 代表理事)

[WINTER.2023 VOL.47] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 30 都倉 俊一(第23代文化庁長官)

もっと見る▶