音楽5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、ACPC)の連携が日増しに深く、強くなっています。MUSIC AWARDS JAPANの来年2025年5月開催へ向けて、急ピッチで動き出しています。このアワードをなぜ開催するべきなのか、そして音楽産業に携わる人々とアーティストが何を目指して団結し、動き出したのか――日本レコード協会の村松俊亮会長とACPCの中西健夫会長が語り合いました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 37 村松俊亮(一般社団法人日本レコード協会会長)
MUSIC AWARDS JAPANは「まずは、やる。そして育てる」
音楽5団体の団結のもと、来年5月に開催されます
全員が「言い出しっぺ」
中西:最近は音楽5団体が集まるようになって、村松さんとお話しする機会も増えました。MUSIC AWARDS JAPANの開催へ向けて、頻繁にお会いしています。
村松:だいぶ密になってきましたね。
中西:昨日、今日だけで3回もご一緒していますから(笑)。今日は改めてMUSIC AWARDS JAPANのお話ができればと思います。日本は長い間、大きな音楽マーケットを持ちながら、極端にドメスティックな市場だと言われてきましたが、コロナ禍を経て大きく変わってきました。国内だけではなく、世界を目指す日本のアーティストが何組も出てきて、実際に成果も挙がってきています。僕は8年くらい前にアメリカのグラミー賞を現地で初めて観たのですが、当時から日本でもこんなアワードができたらいいなと思っていて、小林武史さんはじめ、プロデューサーの方々と色々相談はしていたのですが、今こそまさにそのタイミングじゃないかと思っています。業界側が主導する、本当の意味でフェアなアワードにして、世界に発信するべきだと考えていたら、音楽5団体の皆さんも、実は同じような発想をお持ちで、MUSIC AWARDS JAPANの構想が具体化していったという感じですよね。
村松:今では関わっている皆さんはそれぞれ、自分が言い出しっぺだと思っているくらいですし、僕自身もそうです。中西さんがおっしゃった通り、世界の音楽の聴き方がストリーミングに置き換わり、フィジカルが中心であった時代とは様相がガラリと変わりました。アーティスト達がつくった楽曲やミュージック・ビデオが、世界中に一瞬にして届く時代になりました。弊社の例だとCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は、『マッシュル-MASHLE-』(第2期)というアニメ作品のオープニング・テーマなのですが、今年1月中旬にアニメのオープニング映像とフル尺じゃない楽曲をYouTubeにアップしたところ、10日間くらいで世界中を席巻したんです。南米、北米、アジア、ヨーロッパ、そしてロシアまで。僕自身もすごく驚きまして、やり方を間違えず、クオリティさえしっかりしていれば、ここまでのスピード感を持って、自分達のクリエイティブが世界へ届くことを体験しました。日本の音楽マーケットがガラパゴスだったことも事実ですが、現在は日本の音楽の素晴らしさ、面白さが世界に評価され始めていると思います。Creepy Nutsだけではなく、弊社で言えばYOASOBIもそうですし、藤井風さんや新しい学校のリーダーズなど、様々なタイプのアーティストから火がつき始めています。さらにMUSIC AWARDS JAPANを通して、日本の音楽の魅力が一気に世界に広がる可能性があると思っています。
中西:機が熟した感じがしますよね。MUSIC AWARDS JAPANの構想も8年前に発表していたら、リアリティが伝わらなかったかもしれない。今、まさに日本の音楽の魅力が世界で評価され始めています。日本の音楽は日本全体のカラー云々というより、それぞれのアーティストの個性が際立っている面もあります。今年は『SHOGUN将軍』が、日本語の台詞中心の時代劇だったにもかかわらず、エミー賞を受賞しました。エンタメの世界では日本語で勝負はできないと言われ続けていましたが、風向きが変わってきたことを実感した出来事でした。