
PROFILE ためすえ・だい
1978年生まれ。2001年、エドモントン世界選手権において、男子400mハードル日本人初の銅メダルを獲得。2005年、ヘルシンキ世界選手権にて、再び銅メダルを獲得。オリンピックには、シドニー、北京、ロンドンと3大会連続出場。2007年、東京の丸の内で「東京ストリート陸上」をプロデュース。2010年、アスリートの社会的自立を支援する一般社団法人アスリートソサエティを設立、代表理事を務める。2011年、東日本大震災が発生した直後に「TEAM JAPAN」を立ち上げ、競技の枠を超えたアスリートに参加を呼びかける。最新刊『負けを生かす技術』(朝日新聞出版)など著書多数。
オフィシャルサイト「爲末大学」 http://www.tamesue.jp/
中西:最初にお会いした時、アスリートのセカンドキャリアの問題もお話しましたよね。若い頃に一生懸命何かに打ち込んだが故に、人生の後半が生きにくくなってしまうという状況は、ミュージシャンも同じように抱えているのですが、この問題が解決できないと、未来に向けてスポーツや音楽の素晴らしさをストレートに伝えられなくなってしまうと思うんです。
為末:おっしゃる通りです。アスリートのセカンドキャリアを調べていくと、やはり学校の先生や競技の指導者になる場合が多いんです。でも、本当に数%しか枠がありませんし、その他のスポーツと関連している仕事に就ける人でも10数%しかいないのが実状です。僕はスポーツで社会の問題を解決することを大きなテーマにしていますが、スポーツと社会を結びつけた事業が立ち上がれば、必ずそこに雇用が生まれて、選手たちのセカンドキャリアにもつながりますので、今後も色々な試みをしていきたいと思います。
中西:僕はミュージシャンをやっていましたが、たまたま裏方に回ることができて、今日までなんとか生きてこられたんです。でも、一緒にバンドをやっていた仲間のことを考えると、この問題の切実さが分かります。セカンドキャリアについては、スポーツと音楽の共通テーマとして考えていくべきですよね。
為末:本当にミュージシャンとアスリートが置かれた立場は近いと思いますね。22歳くらいになると、周囲から「お前、そろそろ大人になれよ」という声が聞こえてくる感じが全く同じでしょう。
中西:「いつまで夢を追いかけているんだ」という社会からのプレッシャーがあります。
為末:でも、そこを突き抜けられる人たちが一定数いるから、ヒーローが生まれてくることも事実です。セカンドキャリアのサポートは、ヒーローを生むために必要な仕組みだと考えてもらえればいいですよね。
中西:そろそろこの問題に理解を示してくれる企業が出てくるような気もするんです。もちろん実際に事業化するためには、セカンドキャリアに踏み出そうとする人材を、誰がどういう基準で集めてくるのかというテーマが出てきますので、為末さんとも一緒に考えていきたいんですよ。
為末:こちらこそ、ぜひよろしくお願いします。