
さだまさし
PROFILE
シンガー・ソングライター、小説家。1952年、長崎市生まれ。3歳からバイオリンを始め、修業のため上京、葛飾区内の中学校に入学。73年、フォークデュオ「グレープ」としてデビュー。76年、ソロ・シンガーとして活動を開始。「関白宣言」「北の国から」など数々のヒット曲を生み出し、『解夏』『眉山』『風に立つライオン』などの小説も発表。NHK『今夜も生でさだまさし』ではパーソナリティを務める。2015年8月、一般財団法人 風に立つライオン基金を設立(2017年7月から公益法人認定)。助成事業や顕彰事業、被災地支援事業、感染防止対策支援などを実施。デビュー50周年記念日の2023年10月25日には、トリビュート・アルバム『みんなのさだ』がリリース。24年初頭には、最新アルバム『なつかしい未来』を携えた50周年ツアーのアンコール公演が行われ、5月からは全国ツアーがスタートする。
さだ:これは僕の感覚ですけれど、歌い手というのは、ライブが始まって照明が当たった瞬間に、その日の人生が始まるんです。そして、ステージが終わってお客さんが立ち上がった瞬間に、その日の人生は終わるんです。生まれて死ぬことをライブごとに繰り返している。めちゃめちゃいい人生もあります。だけど二度とやりたくないようなひどい人生もある。うまくいった人生を次の晩になぞろうとすると、絶対にダメ。ライブは生き物だから、そこにどんなお客さんがいるのか、呼吸の感じからすべて違う。だから毎日違うお客さんとライブをつくりだすのは、ものすごい力仕事なんです。
プロモーターの皆さんにお願いしたいのは、毎日のライブでどういうお客さんが来てくれているのかをよく考えてくださいということです。それによって、その日のライブは大きく変わりますから。地方のプロモーターの方はご苦労も多いと思いますよ。その街の人口が少なければ人を集めるだけでも大変ですからね。経済は大都市ばかりに集中しているのに、ライブにお金を出せというのは酷だなと思いながら、それでもできるだけ人を集めようとご苦労なさっているのは重々承知しています。50年も歌っていると分かりますよ。それでもお客さんは大事にしてほしい。大事にするというのは、おべっかを使えということではなくて、「いいお客さんってなんだろう?」と考え続けることです。それが次に歌い手がライブをやる時の糧になります。
今日はプロモーターが集まる研修会だから、レアな話をしました。普段はこんな真面目な話はしません(笑)。僕にとってプロモーターは、体の臓器だから。これがなくなったら僕は動けないから、真面目な話をしました。
中西:そう言っていただけるのは本当にありがたいです。
さだ:僕が最初に自前でライブをやった時、徹底させたのが、スタッフに正装させたことです。入口にいる人には「ネクタイを締めてね」と言いました。なぜかと言うと、これはお金をちょうだいしている立派な商売なんだから、お客さんをお出迎えする覚悟を持ってくれと。
中西:50年間そういう思いでやってこられたから、今のさださんがあるわけですね。改めて言いますが、4600本ですよ。
さだ:正確には4612本です。
中西:すみません(笑)。本当にすごいです。今日はありがとうございました。