――「2年目のMAJ」はどうなっていくのか、現時点での構想をお聞かせください。

中西健夫
一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長
一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会副理事長
中西:今回のアワードには、グランプリエンジニア賞、ミュージックテック功労賞はありましたが、別の形でのスタッフへの賞もつくれればと個人的には考えています。アーティストだけではなく、スタッフにとっても励みになり、音楽業界のリクルーティングにもつながる賞が必要だと思います。それと社会貢献活動を積極的に行っているアーティストも、何らかの形で讃えていきたいですね。また、京都では授賞式への入場は関係者の方のみでしたが、東京での開催となると会場の規模が大きくなったり、複合的な会場での開催も可能になりますので、一般のお客さんの参加も考えていきたいと思います。
野村:初回は公平性や透明性を強調するために、分かりやすく賞をセグメントしていくことが必要でしたが、2年目以降はもう少し幅を広げて、バックヤードのスタッフ達であったり、ライブについての賞の創設も考えていきたいと思います。ライブに賞を贈る場合、公平性を担保するのがなかなか難しくて、どのライブ、どのツアーが良かったのかを選ぶためには、すべてのライブを観ていなければということになってしまいます。結果的にライブについては、動員数だけを基準とした「ラージェスト・ライブ・オーディエンス賞」のみになりましたが、演出面に関わっているクリエイターの方であったり、ライブのスタッフの皆さんもピックアップできればと考えています。
稲葉:広げていくこともやっていく必要がありますが、選考方法のプロセスをもう少しチューニングして、精度をどう高めていくかも来年に向けて重要になってくると思います。今回は初めて設立されたアワードでしたから、その賞が設定されたことすら、対象となる人達が気づいていない、こちらも伝えきれていない中で進んだところも現実的にはあったと思います。本来ならば該当する領域の人達に対しては、きちんとインフォメーションをして、プロセスもしっかり見ていただいて、当日を迎えるという流れをつくる必要があります。それが当事者意識を育み、アワード自体の盛り上がりをつくっていくと思いますので、まだまだ丁寧にやっていかなくてはいけないことが多いですね。
――「選考プロセスのチューニング」ということで、ネット上の声の一例を挙げると、対象となる作品にリリース年などの基準があるのかという疑問がありました。
野村:だいぶ以前にリリースされた作品が受賞したことによって、色々なご意見が出ていることはしっかり把握しています。2024年を対象期間とするならば、もともと「2024年にリリースされた作品」を対象にしているわけではなくて、「2024年に聴かれた作品」が基準なんです。リリース時期を基準にするとストリーミングの市況とちょっとズレてくるんですよ。今はCDの時代のように瞬間的にチャートで上がって落ちていくという動きではなく、継続的にずっと聴かれて、ストリーミングでも上位に残っていくのが愛されている、評価されている作品の動向なんです。24年のストリーミングの中には、23年、22年、さらにはもっと以前に発表された作品がたくさん残っています。だから今までの常識ではなく、ストリーミングの時代だからこそ、あえてこの年に聴かれた楽曲が対象になったほうがふさわしいのではないか、という思いが我々にはあったんです。
中西:こういったところにも、過去の常識と新しい流れのズレが見えてきますよね。実際にはオリコンのチャートでも現在は、過去の楽曲が数多く入っていますから。こちらとしては今までの常識を変えていくべきだと思ったことの一つとして、「2024年に聴かれた作品」を基準にしたんです。
稲葉:インフォメーションの仕方に問題もあったと思います。僕らの考え方自体がちゃんと伝えきれなかったということと、それこそ選考過程のチューニングの精度の問題でしょうね。
中西:そうですね。こちらのアワードに対する考え方を改めて伝えるべきだと思いました。
――音楽業界の各団体に向けて、来年以降どのようにMAJに協力していただきたいのか、最後に実行委員長の野村さんから、ひと言お願いいたします。

野村:第一段階としてエントリー楽曲の発表がありますが、その段階から注目していただきたいですね。そして、皆さんが持っている投票権を行使していただいて、投票に参加していただきたいと思います。次にノミネート楽曲が発表されるので、そこでも注目していただきたいです。そして、もちろん授賞式当日も積極的に参加していただければ。皆さんの参加意識がとても大切で、それこそがMAJのステイタスをさらに上げるのだと思います。最終的に選ばれるのが、どの作品に、誰になるのかももちろん大事ですが、ノミネートされること自体が誇らしい出来事なんだと、僕らももっともっとアピールしていきたいですし、アワードへの考え方、基準、カテゴリーもブラッシュアップして、随時発表していきますので、ご注目いただければと思います。