取材・構成:君塚太
撮影:小山昭人(FACE)
収録日:2025年10月27日
ここ数年のACPC人材育成研修会では、本誌の連載収録を兼ねて中西会長対談が行われていますが、今回登壇いただいたのは9競技12リーグの国内トップリーグが加盟する日本トップリーグ連携機構の川淵三郎代表理事会長です。この連載対談に川淵会長をゲストとしてお招きするのは、2017年の32号以来になります。当時から2人はスタジアム・アリーナの未来を語り合っていましたが、2019年3月に日本トップリーグ連携機構とACPCは一般社団法人Entertainment Committee for STADIUM・ARENA(略称ECSA/エクサ)を設立。以降、状況は大きく進展しました。スタジアム・アリーナ時代を象徴する会場の一つであるTOYOTA ARENA TOKYOで行われた「8年後の対談」は、あの時のヴィジョンが実現しつつあることが示され、さらなる夢も語られる「答え合わせ」のような内容になりました。また川淵会長よりコンサートプロモーターへの熱く、貴重なアドバイスもいただきました。
中西:今日の会場であるTOYOTA ARENA TOKYOをはじめ、Bリーグのクラブのフランチャイズになっているアリーナを、我々が普通にコンサートで使用できるようになった一番の突破力、推進力になってくださったのが川淵さんです。川淵さんの日本トップリーグ連携機構とACPCが、スポーツと音楽の垣根を越えてECSAという団体をつくり、「体育館」的なものではない「アリーナ」の設立を目指して話し合い、B1リーグに参加するためには5000人以上収容のアリーナの確保を条件とするなど川淵さんがレギュレーションを詰められて実現したわけですので、改めてお礼を申し上げたいと思います。
川淵:いえいえ(笑)。そもそものスタートは、東京2020オリンピックに向けて、バスケットボールの会場として有明アリーナを建設する予定があったにもかかわらず、東京都の中で反対する動きが起きたことです。無駄な予算を使うな、バスケットをやるなら横浜アリーナでいいじゃないかと。僕は東京に素晴らしいアリーナができることが、オリンピックを開催する意義の一つだと思っていましたから本当に頭にきまして(笑)、アリーナのことを調べたんです。それまではアリーナの経営がどうやって成り立っているのか、正直あまり知りませんでした。要はスポーツのための会場をつくってほしいという思いだけだったので、経営のことまでは考えていなかったわけです。ところが調べてみると、例えば代々木第一体育館は年間、スポーツで使われているのは約100日で、エンタテインメントでは200日以上使われていることが分かった。驚きましたね。「だから代々木第一体育館は黒字なんだ」と。横浜アリーナの前年度の使用状況を見ても、エンタテインメントの利用だけで、大変な黒字になっていました。さいたまスーパーアリーナもそう。エンタテインメントがあってこそ、アリーナは黒字経営できるんだと初めて知りました。そんな時に中西さんの存在を知り、お話するようになったんです。
中西:会見で川淵さんが僕の名前を出して、次の日、週刊誌の記者が家の前にいましたからね(笑)。でも改めて考えてみると、あの時に川淵さんが怒りの感情だけではなく、冷静に分析して、エンタテインメントがあればアリーナの経営は成り立っていくと判断したからこそ、有明アリーナは誕生したわけです。
川淵:当時、僕は中西さんから色々と勉強させていただきました。「アリーナでコンサートをやるためには、11トン車が入ることのできる動線がないと絶対ダメなんです」と聞いて、それからアリーナの建設予定が持ち上がると、「11トン車が入る動線はあるのか」とチェックするようになりました。北海道日本ハムのエスコンフィールドに行った時も、地下に11トン車が通れる広い通路があって、さすがだなと思いましたね。
中西:コンサート関係者からすると、川淵さんの口から「11トン車」という言葉が出ること自体が新鮮です(笑)。
川淵:11トン、11トンって、何度も中西さんから聞きましたから(笑)。
中西:すみません、11トン車の話を川淵さんに刷り込んだのは僕でした(笑)。でも、エンタテインメント関連の用語を僕らが口にするより、川淵さんが発言されたほうが、はるかにインパクトがあるのも事実です。それが「体育館からアリーナへ」という時代の流れを生むことにつながり、Bリーグの理念ともぴったり合ったわけですよね。