会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

議連設立の経緯

中西健夫(一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長 株式会社ディスクガレージ代表取締役社長)

「高額転売は今や音楽業界だけの問題ではありません。スポーツや演劇、ミュージカルなども含めて、人気のあるコンテンツはすべて転売の対象になっています」(中西健夫)

-今後、立法化を目指すにあたって、議連の役割はさらに大きくなると思います。そもそも議連設立の働きかけを行ったのは、どういった理由だったのでしょうか。

中西:ライブ・エンタテインメント周辺の環境は、10年前から考えると劇的に変わりましたし、これからはもっと変わり始めると思います。我々も5年とか10年のスパンで物事を見据えていくべきですが、高額転売問題のように半年で急激に事態が悪化してしまう場合もあります。
そんな時に個々の団体だけで対応するのは限界がありますし、特に法整備が必要な問題は立法の担い手である国会議員の先生方に状況をご理解いただき、客観的なジャッジをしていただいた上で前に進む必要が出てきます。議連の活動が開始されて3年目くらいですが、実は当初コンサート会場不足が取り組むべき大きな問題だったんですけれど、いきなり転売問題が浮上して、テーマがシフトしていきました。

野村:中西さんがおっしゃった「10年間の劇的な変化」のうち、音制連にとって一番大きかったのは、CDの売上が落ち込み、会員プロダクションの業務の中心が権利ビジネスからライブ・ビジネスに変わっていったことです。そういった変化を受けて、コンサートプロモーターの団体であるACPCさんと今まで以上に密に連絡を取り合い、一緒に課題へ取り組んでいく必要が出てきたんです。

-山下先生は業界側からの働きかけを受ける側だったわけですが、そもそも議員の方々の間ではライブ・エンタテインメントに対してどんな印象があったのでしょうか。

山下:議員も一般の音楽ファンと何ら変わりなく、ライブに足を運んだ経験はあるわけです。ライブ体験による感動を日本中に広めたいという思いは持っていますので、議連のメンバーは自民党だけで、すぐに80名になりました。
産業として考えてみても、ライブ・エンタテインメントは売上が10年前の倍以上になっている成長産業ですよね。現在の市場全体の売上は、大体3000から3500億円くらいでしょうか?

中西:業界団体で発行しているライブ・エンタテインメント白書の調査で約3400億円です。

山下:アメリカでは80億ドルの売上規模があり、1兆円産業になっているそうですが、日本でもさらに育てていかなければいけないわけですよ。それなのに転売市場が、ある統計によると全体の1/6に相当する約500億円にのぼるそうです。その相当部分がアーティストや主催者のもとに届かずに、ファンの犠牲の上に不当な利益を上げている者がいるとするならば、これはやはりおかしいのではないでしょうか。


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