会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

東北ライブ・シーン復興の道標を ARABAKI PROJECT代表 菅 真良さんに聞く

昨年のARABAKI ROCK FEST.10で。開催時期は変わっても、このような幸福な風景は取り戻せるはず。 (c)2010 ARABAKI PROJECT

ARABAKI ROCK FEST.は、その開催規模だけではなく、毎年、ロック・フェスと地域文化の融合を試みてきた歴史も含めて、東北のライブ・シーンを象徴する存在です。今年は4月29、30日に開催される予定だった、そのARABAKIは震災の影響でどうなるのか?もちろん、深刻な被災状況を考えれば中止という選択肢があって当然ですが、ARABAKI ROJECTのスタッフが出した結論は「延期」。スタッフを代表してジー・アイ・ピーのコンサート部本部長・菅真良さんに同フェスをリスタートさせるヴィジョンを伺いました。

「そのまま開催」が恩返し

「中止」か「延期」かの決断は、どのような過程でされたのでしょうか。

震災直後は、もちろん中止することも選択肢に入っていました。被災された方々のことを考えれば、当然「それどころじゃない」と思いましたし。フェスはやはり「お祭り」なので、毎年同じ時期に開催することが大事だと思っていて、たとえ延期によって開催が可能になったとしても、本来の春にやるARABAKIとは違うものになってしまうんじゃないか?という不安もありました。そんな中で、出演予定だったアーティストや関係者の皆さんが励ましてくださったり、「震災のことを別にしても、たまには、いつもと違うARABAKIになってもいいんじゃない」とアドバイスしてくださった方もいて、最終的に延期を決断して、その後、夏から秋の開催に向けて準備を進めています。

夏から秋の開催になったことで、準備段階での大きな違いはありますか。

夏に開催されているフェスはたくさんあるので、出演者のラインアップをはじめ調整事項が増えてくるのですが、各フェスのオーガナイザーの方に相談すると、ARABAKIが震災によって延期せざるを得なくなったことに配慮して、自分達のプランを変えてくださったりすることもあります。こちらが東北だということを気にかけてくださっている感じが伝わってくるんです。本当に申し訳ない気持ちになって「これはあまりいいことじゃないなあ」と色々迷ったりもしたのですが、今はありがたく受け止めて、春に開催する予定だったARABAKIを、できるだけそのままの環境でお客さんに届けることが、一つの恩返しになるんじゃないかと思っています。

現在は諸々のインフラが復旧したとは、とてもいえない状況だと思いますが、やはりフェスのプランニングにも影響は大きいでしょうか。

電話でのインタビューに応えてくださったジー・アイ・ピーのコンサート部本部長・菅真良さん

震災があったからといって、例えば電力の使用量を極端に抑えたり、チャリティーを全面に掲げるといったことは、現状考えていません。もちろん、できるだけの配慮は必要だと思いますし、被災された方々に対しての支援も別の形で考えるべきだと思いますが、フェスそのものについては無理がないようにやろうと考えています。ARABAKIは今年で終わるわけではありませんので、東北の皆さんへのサポートも、今年も、来年も、再来年も長い目で見てやっていくという気持ちのほうが大事じゃないかと思っています。今までやってきたように、東北の音楽フェスティバルということを念頭に置いて、今後も続けていく努力をしていくしかないなと。まずは何より、チケットを買っていただいて、フェスに来ていただいた方々に満足していただく?それが本来のフェスの在り方ですからね。


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