会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

昨年の出来事、今年の展望(1)

ディスクガレージ専務取締役渡邊邦夫 ACPC理事ホットスタッフ・プロモーション代表取締役副社長横山和司
撮影:小嶋秀雄

昨年の本紙は、震災からの復興状況をお伝えすることに力を注ぎ、全国の夏フェスをレポートする特集もあったことで、各エリア・プロモーターの方々に取材させていただく機会が増えた1年でした。2012年初号では、久し振りに在京会員社から、お二人に取材をオファー。昨年の日本のライブ・エンタテインメント・シーンでは、どんな象徴的な出来事があり、それが今年はどのように変化していくのか?をテーマにした対談を企画しました。

震災からライブ再開まで

昨年を振り返るには、東日本大震災のことに触れないわけにはいきません。音楽業界全体の中でも特にライブへの影響は大きかったと思います。お二人は3.11当日、どんな状況だったのでしょうか。

横山:当日、弊社が担当していたライブは2?3本ありまして、ちょうどリハーサルが始まるか、始まらないかという時間帯だったんです。携帯電話がつながらなくなったりとか、色々なことでかなりバタバタとしながら、各プロダクションのマネージャーの方や、制作の担当者となんとか連絡を取って、その日の開催はすべて中止を決断しました。ただし、翌日以降の状況は全く見えませんでしたね。余震もありましたし、3月いっぱいは自粛という方向性は、なんとなく耳に入ってきましたが、じゃあ、4月1日からであれば再開できるのかどうか、その時は判断できませんでした。

渡邊:弊社もライブは3ヶ所でした。同じように各方面と連絡を取りながら、まずは会社にすべての情報を集約しようということになりました。そこからのやり取りは、ほとんど全社メールで、各現場や各社はこういう判断をしている、この会場はこういう発表をしているという情報が、できるだけ全員に行き届くようにしました。日々の対応を毎日考えて、毎日修正していったという感じでしたね。

様々なケースがあると思いますが、ライブを中止する、しないの最終決定は主催者、ないしはコンサート・プロモーターの役割になるのでしょうか。

横山:いや、100%ではないと思いますね。やはりアーティスト側、プロダクションの判断もすごく大きいですし、制作会社が入ってる場合は、もちろん制作者の意見も重要です。主催者と企画側と制作側、三者で方向性を決めて、発表する窓口は主催者であるコンサート・プロモーターが担って、各地に伝達していくという形です。主催者に放送局が入っていたら、そちらの判断もあります。

渡邊:3月から4月は自粛ムードが強かったと思いますが、日本全体がこのまま経済活動をストップさせていたら良くないという雰囲気が徐々に出てきましたよね。音楽業界でも、このままだったら各社が立ち行かなくなるし、アーティストも活動できなくなってしまうという危機感が生まれてきました。だから、まずは5月ぐらいをメドに、振り替えの日程を一生懸命調整して。実際に5月以降は、一気にスライドさせた公演が集中して、ものすごく忙しくなりました。

横山:確かに大変な忙しさでしたね。

夏フェスへの影響

様々なケースがあると思いますが、ライブを中止する、しないの最終決定は主催者、ないしはコンサート・プロモーターの役割になるのでしょうか。

横山:FUJI ROCK FESTIVALの場合は、開催地が東北から近い新潟県ということもあって、お客様からの「開催できるのか」という問い合わせは、震災後に結構ありましたね。それと海外アーティストが来日できるのかという心配もありました。でも、実際に開催日が近づくにつれ、大きな問題は起きずに、いつものように開催できることがはっきりしてきました。

渡邊:ROCK IN JAPAN FESTIVALも、茨城県という開催地を考えると慎重になる面もありましたし、開催発表もずいぶん遅らせて、慎重に検討してオールクリアにしてから正式発表になりました。開催への力になったのは、茨城県やひたちなか市の皆さんが、常に開催に前向きでいてくださったことです。特に市長さんからはメッセージまでいただきましたし、それがお客様に伝わったこともあって、開催に対してネガティブなことを言う方は、ほとんどいませんでしたね。最終的にはチケットもソールドアウトになり、過去最高の動員で終えることができました。

横山:新木場の夢の島公園で開催したワールドハピネスも完売しましたし、夏フェスは全般的に動員面での影響は最小限に抑えられたのではないでしょうか。開催が延期されたフェスもありますので、主催会社をサポートする立場の僕達からすれば、ありがたかったとしかいいようがないですね。

渡邊:本当にそうだと思います。

横山:難しい点があったとすれば、社会的なメッセージを発する場としてもフェスは有効だと思いますが、基本的にフェスに参加しているお客様は楽しみたいと思っているわけで、その辺りのバランスについては、主催者やアーティスト側と話し合いました。

渡邊:復興支援がきっかけとなって、COMPLEXがライブ限定で再結成したり、氷室京介さんがBOOWY時代の曲のみを歌うライブが開催されたりもしました。弊社で行なったこの2つの東京ドーム公演は、お客様もポジティブに受け止めてくれたようでした。あの時、東京ドームは節電問題などで色々な報道がされていたタイミングでしたが、どちらの公演もソールドアウトとなり、大成功に終わりました。


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