会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

法改正のテーマは夜間市場の創出とインバウンドです

今回、法改正の背景には、巨大な潜在市場である夜間市場の創出というテーマがあります。現在、12時以降の時間帯のエンタテインメントに関する経済活動は、適法に行うのが難しい状態なので、そこを規制緩和し、新たな市場を創出して、経済的な効果を街にもたらすのが最終的に目指すところです。東京オリンピックに向けたインバウンドを考え、外国人観光客に街でたくさん遊んでもらってお金を落としてもらう。このままだと東京は文化的な都市だと思って来てみたら、深夜に遊べるところが全然なかった、あるいは、あったとしても違法営業だったということになりかねません。健全な夜間市場をつくり、そこにふさわしい文化的なコンテンツを入れ込んでいく。文化は夜に生まれるという言葉がありますが、今回の法改正はコンテンツ産業にも大きな影響があると思います。

風営法の改正以外にも、夜間市場活性化のため、国や東京都は様々な試みをしています。実験的に渋谷と六本木に深夜バスを通してみたり、インバウンドとは直接的な関係はありませんが、接待交際費の控除枠を広げるのも夜間の経済活動を考慮してのことでしょう。今回の風営法改正も、魅力ある文化的で元気な街づくりのための規制緩和の一つであり、多様な業界で、今回の規制緩和が有効活用されていくことを期待されています。

ライブ・エンタテインメントでも、深夜に新しいマーケットが生まれる可能性があるんじゃないでしょうか。例えば、いわゆる2016年問題といわれるライブ会場不足に対応するために、夜の時間帯で新しい演目をつくることも効果的かもしれません。夜10時くらいまでライブをやって、12時以降にはもう少しクラブっぽいイメージのステージをやる。つまりライブの二毛作ですが、週末を中心にこのような二毛作のニーズはあるように思います。今回の法改正は、構造要件も緩和して二毛作を念頭に置いたものとなっています。

クラブとライブの融合

また、現在のクラブイベントとライブイベントの構成は全く違っていると思うのですが、今後、コンテンツ面はもちろん、運営面においても両者の融合がトレンドになってくると思います。クラブイベントは1人、あるいは数人のオーガナイザーがいて、プロモーションには頼らずに身内のネットワークや、DJの集客力でイベントを成功させています。そのような小規模のイベントから生まれる才能をより大きなステージに押し上げて、育てていけるような業界構造が求められていくと思います。それを実現させるためには、音楽好きのオーガナイザー中心のイベントに加え、コンサートプロモーターのような立場の存在がダンスコンテンツにおいても重要になってくるように思います。

日本のクラブをベースに活動しているDJやクリエイターの中には、スターの原石みたいな若い人達がゴロゴロいます。プロモーターの方々がワンランク上のステージを用意してくれれば、大きな成功も夢じゃない。海外ではEDMが爆発的にヒットしていて、何十億と稼ぐDJが出てきていたり、DJがポップミュージックのプロデュースをして新しいヒット曲も生まれています。そういうスターDJの登場が、日本でもあり得るかもしれませんね。すでに上陸しているEDMのイベントに、新しいコンサートプロモーターの姿があるのかもしれません。


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