平田:先程申し上げた産業構造の全面転換で何が起こったかというと、コンサートはスポーツと同じになったんですね。スポーツはもともとCDにあたるような商品がなくて、試合観戦に絡むもので利益を上げる構造なんです。
中西:つまり観戦=ライブのチケット収入と放映権、それと会場で販売するマーチャンダイジングと。
平田:その収入を一生懸命マキシマイズするのがスポーツ産業ですが、音楽産業も近づいてきたわけです。でも、ライブに関するあらゆるノウハウはコンサート業界のほうが先輩であるわけで、学ばなくてはいけないのはスポーツ産業側なんです。
中西:そんなに偉そうなものではないですが、今は(日本の球技12リーグを統括する)日本トップリーグ連携機構の皆さんとも頻繁にお話ししていて、Win-Winでできるところは、連携させていただく方向で進んでいます。それと海外に目を向けると、サッカーのスタジアム運営などにはまだまだ音楽業界側が学ぶべきことがたくさんあると思っていて、お互いに影響し合うことで我々も成長していけると思っています。
平田:ホームタウンとともに歩んでいく、Jリーグ的なシステムを基盤としたスポーツは、確かにこれからはACPCと協力関係をつくっていくべきでしょう。
中西:実際にどうリンクしていくかは、まだまだ難しい面もあると思いますが、今のところJリーグとBリーグとはご一緒できると考えていますし、やっとこういうお話をスポーツ界とできるようになったこと自体、本当に感謝しています。
平田:例えば2002年のワールドカップ。日本のサッカー界が誘致して、開催しましたが、ワールドカップで用意したスタジアムも、J2チームのホームスタジアムとして使われるなど、基本的にサッカーで使ったわけです。当時はそれが当たり前のことでしたが、その後はラグビーでもJリーグのスタジアムを使うようになり、さらに国際イベントの開催にもつながってきている。東京オリンピック・パラリンピックでも議論されているレガシーとは、そもそもこういうことなんです。そこに産業構造の転換によって音楽産業の皆さんも加わってきた。コンサートプロモーターズ協会の中西会長がここまで鮮明に意識を持ってお話をされているということは、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーが、スポーツだけで支えるものから、音楽で支える部分も大きくなってきているということでしょう。スタジアムだけではなく、アリーナについて考えても、もうスポーツとかミュージックとか、そんな壁は全く必要ないですよね。
中西:本当に今だったら、僕らも同じ思いをスポーツ界と共有できると思うんですよ。
平田:ぜひ、ACPCにスポーツ部会をつくってください。
中西:つくる必要性を日々感じています。
中西:産業構造の転換という意味では、もともとコンサートは若者をターゲットにしたものでしたが、少子高齢化時代を迎えて、中高年層を中心とした文化になりつつあるという変化が起きています。トータルで考えると、この変化に対応することもすごく大事なのではないかと。
平田:スポーツの会場の観客層のほうが若くなっているかもしれませんね。それとこれは観客だけの問題ではないですよね。アーティストも……。
中西:全くその通りです。アーティストが70代になっても元気に歌い、演奏する時代になりました。これは喜ぶべきことなので、我々が会場運営などで時代の変化にきちんと対応していかなくてはいけません。