コロナ禍以前、ライブ・エンタテインメント業界では会場不足が大きな課題とされていた時期がありました。現在もこの課題のすべてが解決したわけではありませんが、状況は大きく変わりました。変化の兆しが現れたのは、意外にもスポーツ界からです。バスケットボールのB.LEAGUEが誕生し、さらに2026年からのリーグ構造改革「B.革新」において新たなアリーナ基準が設けられたことで、コンサートにも利活用できるアリーナが全国で続々と設立されることになりました。この流れを受けて、中西健夫ACPC会長と島田慎二B.LEAGUEチェアマンが、アリーナを起点としてさらなる新しい変化を生み出すために語り合います。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 33 島田慎二(B.LEAGUE チェアマン)
一緒に既成概念を崩しませんか
ぜひ、やりましょう
ワールドカップ以降の変化
中西:B.LEAGUEの皆さんとのお付き合いは、日本トップリーグ連携機構の川淵(三郎/代表理事 会長)さんから始まり、前任の大河(正明)チェアマンとも親しくさせていただいていました。その間、ずっと「バスケットボールとコンサートは、会場を共用するには相性がいいですよね」という話をしていたんです。
島田:川淵さんは、B.LEAGUEがアリーナ整備を積極的に推進していくことを標榜した当初から、スポーツのエッセンスだけを考えるのではなくて、コンサートを運営する側、コンサートのお客様の観点も入れたほうが利活用できるという話をされていましたよね。
中西:その話の流れが、最初に具体化したのが沖縄アリーナなんです。
島田:確かにそこからですね。
中西:まさにその沖縄アリーナでバスケットボールのワールドカップが行われたわけですから、非常に感慨深いですね。
島田:沖縄アリーナはコンサートもある程度、誘致できているようですね。
中西:実際にアリーナができて、色々なことが動き出すと、やはり想像以上の波及効果が生まれてくるのではないでしょうか。さらにワールドカップの開催で、プラスアルファがついてきて、会場の認知という意味では大きかったと思います。当然、B.LEAGUEにもいい影響があったと思います。
島田:ワールドカップ後に開幕した2023-24シーズンは、おかげさまでチケットの売れ行きも好調です。開幕節に各会場で38試合が行われましたが、20試合が完売したり、去年比130〜140%くらいに入場者数が増えています。それとチケットを買おうとしてくださるお客様がB.LEAGUEのサイトをチェックしてくれて、アクセス数が飛躍的に伸びています。とはいえ、全60試合もありますので、年間通じてどこまで恩恵にあずかれるかは未知数です。まあ、幸先のいいスタートは切れましたという感じですね。
中西:今、B.LEAGUEの観客層は、どんな感じなんですか。
島田:これは以前からそうですが、他のスポーツに比べると女性が圧倒的に多いんです。
中西:それに若いですよね。
島田:若いです。あとはファミリー層。ひと言でいうと、若くて、女性が多くて、ファミリーが中心という感じですね。他のスポーツとは違う、ユニークなファンゾーンかなと思います。
中西:試合を実際に会場で観てみると、スポーツに対する概念が変わりますよね。DJが入って、ちょっとコンサートに近い感じですから。まさに音楽とスポーツがちゃんと融合していて、会場の雰囲気が盛り上がっている。
島田:試合のテンポも速いですし、DJがいることでさらにノリノリになります。会場を暗転させたり、照明やレーザーも使いますし。年齢の高い方々は野球やサッカーがお好きな方が多いですので、そもそもファンを新しくクリエイトしていかなければいけなかったんです。若い方にいかにアピールしていくか、特に女性をどう取り込んでいくかに関しては、ブランディングを考える必要がありました。