次にご紹介するエニーも、関連会社を含め多彩な事業が揃っている会社。東京近郊に10店舗あるプレイガイド「ちけっとぽーと」の運営、大宮ソニックシティなどのホールマネージメント事業、CDや出版物の企画制作、コンサートグッズなどの企画販売、マスタリングスタジオの運営、アーティストマネージメントなど、
「音楽に関わる業務」がほぼ網羅されているといってもいいでしょう。コンサートプロモーターとしても、さだまさし、来生たかお、小椋佳などのフォーク/ニューミュージック系のアーティストだけではなく、瀬戸内寂聴の講演会も手がけていることが目を引きます。一方では、どの事業も顧客の年齢層が高めに設定されていることも特徴。事業は幅広く、ターゲットを絞り込んだエニー流のビジネスについて、同社取締役の小林祐一さんに伺いました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
すべてのジャンルに「ライブ」あり
新加盟社紹介:エニー
ネット時代のプレイガイド
弊社は代表の安西(範康)が1987年に1人で始めて、私も当時は入社していなかったのですが、会員向け通販の出版物を制作するところからスタートしたそうです。設立の翌年からは、文化放送開発センターからお話をいただいて、文化放送のコンサートコーナー(プレイガイド)の運営に参加しました。そして、プレイガイドを運営するうちに、コンサートの入口から出口まで—つまりプレイガイドでチケットを売ることからコンサートプロモートまでを手がけようという方針が固まっていったようです。
安西は、さだまさしさんの中学時代の同級生で、そもそもは証券マンだったんです。ところが学生時代の約束で、さださんが事務所を設立した時にお手伝いすることになって、証券会社からいきなりこの業界に入ってきました。ですから、ビジネスに対する着眼点が他の音楽業界の会社とは違う面があるかもしれません。
確かに弊社のお客様の年齢層は高いですね。本当にアダルト層からおじいちゃん、おばあちゃんまでという感じで。弊社は後発のプロモーターですので、都心よりも人口が増え出した関東近郊の会館と組んで、共催的な動きをしながら公演数を増やしていきました。コンサートのラインナップを見ていただけばわかると思いますが、そんな事情もあって、どうしても最先端の音楽というより、地元の方々が安心して楽しめるものが中心になったのだと思います。
プレイガイドの運営にしても、このインターネットの時代に大きな利益は当然期待できないのですが、やはりアダルト層のお客様を中心に、チケットは人の顔を見ながら相談して買いたいという方がいると思うんですよね。プレイガイドは正直、ずっと赤字が続いていましたが、実は少し上向きの兆しもあるんです。今年の12月16日に横浜も開店して、都内の銀座、新宿、渋谷と併せて10店舗のプレイガイド網ができつつあります。最近あるアーティストの大きな公演で、先行店頭予約を店頭で直接お客様に告知して、先行予約を開始するという試みをやってみました。本当に全くインターネット時代と逆行していますが(笑)、今後も色々な展開ができるのではないかと思っています。
台風を超えた「寂聴パワー」
瀬戸内寂聴さんの講演は、ご高齢ということもあって、お身体の調子を見ながら、2ヶ月の間に3〜4カ所という感じです。でも、お客様の熱気はすごいですよ。今年、東京に台風が来た日がありましたが、あの日がたまたま中野サンプラザでの講演会だったんです。私たちは中止にしようか迷っていたのですが、払い戻しもありで決行したんです。結局ふたを開けてみたら、あの天候のなか払い戻しをした方は1割ちょっとでした。ほとんどがおばあちゃんですけれど、皆さん「やるっていうから来たわよ!」という感じで足を運んでくださって……本当に驚きましたね。
ACPCに加盟して、他の会員社が手がけている野外フェスの運営などを拝見していると、とても参考になります。ああいう形のフェスをクラシックでできるといいなと思います。もし実現するなら、地元住民の方々や企業と連動していく必要があるでしょうから、そういった際にACPCに加盟していることが活きてくるのだと思います。それと加盟したことが、会員社の皆さんに弊社のプレイガイドをお使いいただくきっかけになれば大変ありがたいです(笑)。