会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

新加盟社紹介:文化放送開発センター

文化放送/文化放送開発センターが主催・企画した「ランティス祭り」(富士急ハイランド コニファーフォレスト)は、まさにアニソン界の夏フェスだった。

前の頁でACPC会員社が手がけるライブ「ボーダレス化」の一例をお伝えしましたが、今年新たに加盟した2社も多角的な業務に携わっています。文化放送の系列会社である文化放送開発センターは、1971年の設立当初、番組複製販売、磁気テープや録音機器販売を主な業務としていましたが、その後、教育事業や販促イベント運営、ラジオショッピングにも進出。コンサートやイベント業務が本格化したのは95年に文化放送からイベント事業を譲受してからとのこと。現在はコンサートプロモーター業務をはじめ、演歌から文化放送メディアプラスホールでの落語会まで携わるジャンルは広がっていますが、なかでも近年力を入れているというのがアニメ・ゲーム系のイベント。企画事業部部長の加藤雅彦さんに、1面でも取り上げた「アニソン」のお話を中心に伺いました。

アニソンは物販がポイント

アニソンのコンサートは、文化放送の番組とも連動しているんです。文化放送では、若年層のリスナーをラジオ番組に取り戻すねらいも含めて、アニメ・ゲーム系の番組に力を注いでいますが、『アニスパ!』というアニメ・ゲーム総合情報エンタテインメント番組が、聴取率調査で10代男子モニターの占有率が100%を記録する時間帯もあるなど、着実にその手応えが感じられます。今年9月に開催されたアニソン業界初の野外大会場ライブ「ランティス祭り」では、弊社が企画・主催、そして配券・プロモーター業務を担当し、2日間で2万人を動員しました。この時は『アニスパ!』内で、5週にわたって『祭りだ!祭りだ!ランティス祭りだ』という番組を組んで、チケット情報など最新ニュースを放送、当日へ向けて盛り上げていったのですが、リスナーと作り上げる理想的なイベントとして成功したと思います。

通常のコンサートとの違いに、アニメ・ゲーム系では物販の動きが非常に大きいことが挙げられます。これはアイドルでも同様だと思いますが、お客さんはコンサートと物販の両方が目的なので、いかに買いやすくしてあげられるか配慮することが大事です。「ランティス祭り」の時はやらなかったのですが、通常は本番前日の仕込みの日から物販を始めたり、買った商品の預かり場所も用意しています。

放送局ならではのイベント

アニソン以外で手応えを感じているのは、文化放送のリスナー感謝デーと連動して毎年開催している「浜松町グリーンサウンドフェスタ〜浜祭〜」です。これは社屋がある浜松町の活性化も目的としていて、近隣の東京タワーや東京プリンスホテル、ポケモンセンターなどにご協力いただき、ウォークラリーで街を回るアトラクションを用意したり、グッズ販売や物産展も行ないます。番組でお馴染みのパーソナリティやゲストを招いて、たくさんのお客さんに楽しんでいただいています。このようなイベントは、放送局を母体としたイベント展開の基本パターンだと思います。浜祭のようなイベントをやると、ラジオというメディアはすごくコアなファンに温かく支えられているんだと実感できます。アナウンサーカレンダーを買うためにずっと並んでくださったり、会場で楽しんでいるお客さんの姿を見ると、ラジオとイベントを連動させれば、もっと色々なことができるのではないかと、私自身も文化放送の編成局の人間も強く感じています。

文化放送開発センター企画事業部部長の加藤雅彦さん。

ACPCに入会してよかったことは、今回の新型インフルエンザへの対応について参考にできたことです。クライアントが協賛のイベントの場合、イベントをやるかやらないか、告知をどのように行なうかを考えるとき、「弊社が加盟しているACPCの基準は…」と説明がしやすかったですね。民間の会社にとって、社団法人のオフィシャルな基準を参考にできたことはすごく大きなことでした。これからはコンサート会場の問題について、ぜひACPCでご検討いただきたいですね。最近は公共のホールでも、指定管理業務を民間の業者が行なっているところもありますので、多少変化してきましたが、結局ホールの規定は各自治体の規定なので、なかなか融通が利きません。一方で民間のホールが少なく、興行規模によって会場選びのバリエーションをつけるのが難しい状況は、コンサートプロモーター共通の悩みだと思います。夕食後のオペラ鑑賞が当たり前のヨーロッパのように、日本でもコンサートを楽しめる時代をいつかは築きたいものですね。


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