会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

ショーケースの役割レコード会社との関係

高橋:海外アーティストを盛り上げていくためには、メディアの協力も必要ですよね。我々が10代の頃はラジオが入口になって、レコードを買い、来日コンサートを楽しみに待っていたわけです。洋楽では、音楽雑誌の影響力が大きかった時代もありました。

清水:レコード会社との関係も、より重要になってきていると思います。レコード会社がコンサート、ライブに注目しているという雰囲気は、ヒシヒシと感じますね。今までは協力し合うといいながら、やはりレコード会社とプロモーターは別々に動いていたことが多かったと思いますが、これからは本当に一緒に作っていこうというムードになっています。大手のレコード会社には、ライブ担当のセクションができ始めていますし、僕らと興行ごとに組んでいくケースも、実際に生まれてきています。一緒にマーケットを育てて、その成果をシェアするという考え方も、これからのプロモーターには必要じゃないでしょうか。

高橋:「ショーケース」という言葉が頻繁に使われ始めたのは、この10年とか、15年くらいですよね。レコード会社には、昔から「ライブこそ最高のプロモーション」という認識があったと思いますが、今は宣伝費をかけて、はっきりとプロモーションの一環としてライブを行う場合もあります。

清水:プロモーションでアーティストを来日させる時は、レコード会社がエアーからホテル代からすべての予算を出して、メディアにブッキングしてプロモーションをする。それはだいたい、アルバムがリリースされる時期に行われますが、その3〜4ヶ月後にはコンサートがあって、今度はプロモーターが負担するのが、以前のなんとなくの流れでした。
今はプロモーション来日に、ショーケースのライブを1回つけるスケジュールが増えていて、プロモーター主導で動いている場合、レコード会社主導で動いている場合、もしくは一緒にやるとか、色々なやり方があります。ライブをやるのは、もちろんプロモーション効果も期待できますが、そこでチケット代をしっかり取って、宣伝予算を成立させている面もあるでしょう。

高橋:そういった意味では、レコード会社と一緒に何かをやる機会は増えているのかも知れませんが、僕らとの関係が深まっているかというと、難しいところが多いですよね。個々の人間的なつながりや、「このアーティストを売りたい」という情熱より、マーケティングや予算が、どうしても優先されるようになってしまって。レコード会社の若い現場の人達は大変だと思います。予算面で縛られて、窮屈なことも多いでしょう。

清水:確かに余裕が持てなくなっていますよね。昔のレコード会社はスタッフの人数が圧倒的に多かったし、このアーティストを売ろうとなったら、放送局や雑誌メディアだけではなく、例えばクラブ、当時でいうディスコまで足を運んで、プロモーションをガンガンやっていました。多くのスタッフが集中して一気に動くことができた。それが今は一人の担当者が、20も30ものアーティストを抱えて、全部自分でやらないといけない状態です。大変な状況の中で、懸命に仕事をしている若いスタッフもいるのですが……。

高橋:明らかにレーベルがアーティストを抱えすぎていると思います。でも、それだけの規模がないと年間の予算を立てられないジレンマが、最大の問題でしょうね。


同じカテゴリーの記事

[SPRING.2024 VOL.51] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 35 松本隆(作詞家)

[AUTUMN.2023 VOL.50] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 34 さだまさし(シンガー・ソングライター、小説家)

[AUTUMN.2023 VOL.50] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 33 島田慎二(B.LEAGUE チェアマン)

[SUMMER.2023 VOL.49] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 32 檜原麻希(株式会社ニッポン放送 代表取締役社長)

[SPRING.2023 VOL.48] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 31 横田健二(日本舞台技術スタッフ団体連合会 代表理事)

[WINTER.2023 VOL.47] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 30 都倉 俊一(第23代文化庁長官)

[SUMMER.2022 VOL.46] 中西健夫ACPC会長連載対談 SPECIAL 音楽4団体座談会

[SPRING.2020 VOL.45] 3つのディスカッションから見えてきた、スポーツとエンタテインメントの接点

[SPRING.2020 VOL.45] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 28 大宮エリー(作家/画家)

[WINTER.2019 VOL.44] イギリスに学ぶ「ライブ・エンタテインメントへのアクセシビリティ向上」

もっと見る▶