会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

ライブハウス コミッション設立の目的そして、その先に広がる夜間市場

左から近藤正司 一般社団法人ライブハウス コミッション代表理事・株式会社スペースシャワーネットワーク取締役 執行役員/齋藤貴弘 ニューポート法律事務所/蓮沼健 株式会社ディスクガレージ取締役/撮影: 小嶋秀雄

昨年6月17日に成立した改正風営法が、約1年後の今年6月23日に施行。その間に東京のライブハウスが具体的なアクションを起こし始めました。スペースシャワーネットワーク、シブヤテレビジョン、ディフェンスアンドアソシエイツ、デュオ・ミュージック・エクスチェンジ、ロフトプロジェクト、ロフトというライブハウスの運営会社が協力して、今年4月に一般社団法人ライブハウス コミッションを設立。その後、パルコ(以上、すべて社名は株式会社)も加わりました。同団体設立の目的を、代表理事に就任したスペースシャワーネットワークの近藤正司さん、本誌2 7 号で改正風営法成立の背景を解説いただき、ライブハウスコミッションの設立にも深く関わった齋藤貴弘弁護士にお伺いし、コンサートプロモーターの立場からディスクガレージの蓮沼健さんにもご意見を聞きました。

法改正後の営業許可

近藤:そもそものスタートは、弊社が運営する渋谷WWWの代表、名取(達利氏)が改正風営法について、齋藤さんにご相談をさせていただいたことでした。その後、他社の皆さんにもお声がけをするようになり、施行に向けた情報交換が始まりました。

齋藤:改めて風営法のことをご説明すると、旧法では「夜12時以降の飲食を伴うダンスやライブ・エンタテインメントの提供」は違法だったのですが、改正によって許可を取れば深夜でも営業ができるようになりました。許可の取得が必要なのは「特定遊興飲食店」で、「特定」というのは「深夜」を意味しますが、許可を取るにも細かな条件があるんです。飲食を提供する場所と演目を提供する場所が分離していれば、申請の必要はなかったり、飲食の場所の照明にも一定の基準があったり、地域によっても条件が違います。そういったことを皆さんと一緒に把握していきながら、ライブハウスが法に則った形で夜間市場を活用していくために、営業許可を取れるような態勢をつくりましょう―という流れが生まれたんです。

近藤:最終的には特定遊興飲食店の申請を目的とする社が集まり、一般社団法人の設立に至りました。つまり、今回参加した各社には、夜間にライブ・エンタテインメントを展開していきたいという共通の目的があります。夜間を含めた事業の適性化や、健全な環境を構築するための整備といったことが、団体の定款にも掲げられています。

蓮沼:コンサートプロモーターの立場から申し上げると、今回のような法改正があった時に、やはり交渉の窓口となる組織があって、そこに業界の利益を代表できるようなメンバーの方々が参加していらっしゃることは、様々な交渉をスムーズに進めるためにも大変重要だと思います。また、お二人の話に出た夜間市場の充実は、我々もまさに同じ意見です。土日、祝日に集中するコンサートの在り方を変えていきたいと考えるならば、平日の夜にもっとライブを楽しめるように、ライブハウスだけでなく、その他の会場でも利用できる時間帯の分散を目指さなくてはいけません。様々なインフラや交通機関もかかわってきますので、一概にはいえないのですが、魅力的な平日のイベントとそれを実現するための環境が整えば、さらに市場を拡大できる余地はまだまだあるのではないでしょうか。

近藤:営業許可の問題だけではなく、それぞれのライブハウスが抱えている課題についても、ライブハウス コミッションの内部で一つずつ解決できればと思いますし、我々だけでは力が及ばないインフラや交通機関については、ACPCの皆さんとも連携しつつ、社会に対してアプローチできるように団体としても成長していきたいと考えています。なにしろ我々はまだヨチヨチ歩きを始めたばかりですので(笑)。

情報と交通インフラ

齋藤:ヨーロッパだと、夜間市場が活発なエリアが各都市にあり、それぞれの代表である「ナイトメイヤー(夜の市長)」が集まるサミットも開催されています。今年の4月にはアムステルダムで行われ、ナイトタイム・エコノミーの開発や、夜間ならではの文化をどうつくっていくかなどを、30弱の都市の代表が集まってカンファレンスをしました。私も行ってきたのですが、共通したテーマはインフォメーションとアクセス。コンテンツがいくら揃っていても、特に外国人をターゲットにするとしたら、情報がすごく重要になってきますし、深夜の交通機関を整備する必要も出てきます。情報でいえば、外国人にも親和性の高い情報プラットフォームからの発信が不可欠ですし、交通インフラだと例えばロンドンでは、ナイト・エンタテインメントの業界がロビーイングをして、ナイトチューブという地下鉄を週末だけ終夜運行するようになったところです。

近藤:日本でもそれぞれのライブハウスが、それぞれのやり方で情報発信していますけれど、外国の方からしてみれば、どこで何をやっているのか、自分達が楽しめそうなコンテンツがどこにあるのか分からないと思うんです。業界全体でまとまって情報を出せればもっと便利になるでしょうし、ライブハウス コミッションでもメディアの方々と連動する道を探るべきかなと。また、ナイトクラブでは最近、各店舗共通のチケットを発行するシステムができ上がったようですが、ライブハウスでも何らかのアイディアを検討するべきだと思います。もちろん各店で考え方の違いはあると思いますが、一方でともに考えていくべき課題があることも確かですしね。

共通の目的を持つ力

蓮沼:近藤さんがおっしゃったとおりで、ライブハウス各店で考え方の違いがあり、設備や環境も様々なのは当然ですよね。でも、例えばエレベーターのないライブハウスやホールで、車いすのお客様を安全面に配慮しながら、どのようにご案内するのかを考えると、ある程度統一された基準も必要になると思います。ライブハウス コミッションの設立が、こういったことをプロモーターと会場側で話し合うきっかけになるのであれば、大変良いことですよね。

近藤:振り返ると東日本大震災の時、公演の中止や料金の払い戻し、安全対策の再確認などは、各店でバラバラに対応していましたよね。もし、事前に集まって緊急対策を話し合っておけば、もう少し別の手段も講じられたのではと思います。コンサートプロモーターの方々との連携についてきちんと話し合っておく意味でも、ライブハウス コミッションの存在がお役に立てるようにしたいですね。

齋藤:個別の対応だけでは、どうしても改善できないことがやはりあると思います。そんな時に共通の目的、利害を持った事業者が集まって力を持つことが必要になってくるのではないでしょうか。


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