亀田:今回の「JAPAN NIGHT」も平日でしたが、通常のコンサートでも、平日の開催数をもっと増やせないのでしょうか。コンサートの会場不足の話を聞く度に、土日祝日に開催が集中することが原因なのかなと考えるんです。
中西:例えば働いている方々に足を運んでいただくコンサートであれば、土日と平日の動員が全く違うのは事実です。おそらく土日のほうが、倍くらいの動員を見込めるんじゃないでしょうか。でも、定年退職された方だったら、平日の昼間でも足を運んでくださるかもしれないし、夜でも翌日の出勤を気にせずコンサートを楽しめる。すぐには難しいにせよ、65歳以上が日本の人口の1/3を占める時代、それこそ2020年の東京オリンピックが終わった頃に向けて、僕達がどんな準備をしていくかが大事だと思います。
亀田:それと「JAPAN NIGHT」は、都心での夜間イベントということで音止めの時間制限があり、もともと2時間のメニューでした。18時半からスタートして、実際は多少押して20時40分終了。僕はこの2時間くらいのメニューが、意外と良かったなと思ったんです。ちょっとこの頃、コンサートの時間が長くなりすぎている傾向があると、自戒の念も含めて思っています。
中西:僕は最近、若いアーティストの皆さんに、コンサートのメニューを90分本編+アンコールで組み立てて欲しいと提案しています。どんなに興味があるものでも、人間が集中力を保てるのは90分だそうです。大学の講義時間が90分に設定されている根拠は、そこからきているらしいですね。
亀田:先日さいたまスーパーアリーナで、テイラー・スウィフトのコンサートを観たんですけれど、オープニングアクトの後、本人のパフォーマンスは1時間30分くらいでしたね。でもギッシリ内容が詰まっていて、素晴らしいステージだったと思います。しっかりとしたショーが行われれば、お客さんにも満足していただけるし、19時開演でも20時半には終わります。こういった試みを、日本のトップアーティストが口火を切ってやってくれると、コンサートの在り方も変わってくる可能性が出てきますよね。
中西:これは震災以降、「JAPAN NIGHT」の時にも感じたことですが、最近はお客さんの曲の聴き方とか、音楽に対する好みが変わってきたような気がしませんか?
亀田:例えばどういうところですか?
中西:今ひとつ、まだ不透明なんです。でもはっきりしているのは、昔のヒット曲を求める気持ちが、どんどん高まっていることですね。
亀田:確かにそうです。やはり代表曲、ヒット曲のイントロが鳴った瞬間にお客さんが総立ちになったり、途中で号泣している姿は、ステージから見ていても印象に残ります。アーティストは常にそういう曲を書くという志を持たないといけないと思います。そしてライブでやる時に大切なのは、なるべく昔のアレンジのまま演奏することですね。「JAPAN NIGHT」でも、オリジナルにかなり忠実なアレンジでやりました。もちろんアーティストの今の魂も入り、演奏も今の音になっているんですけれど、基本的にはオリジナルのイメージを裏切らないことを目指しました。
中西:キャリアのあるアーティストのセットリストが新曲ばかりでは、やはりお客さんの期待に応えているとはいえないと思います。
亀田:CDやDVDなどのパッケージで、アーティストが最大限のクリエイティビィティを発揮することは当然だと思います。最新のテクノロジーで、プロが匠の技を使って、トップのクオリティを目指せばいい。でもコンサートにおいては、「お客様は神様」なんですよ。会場に足を運んでくださった方々の期待に応えることを、最優先するべきだと思いますね。
中西:アレンジがオリジナルに忠実だと、イントロだけで曲が浸透していく感じが「JAPAN NIGHT」でよく分かりましたね。イントロで曲のイメージが湧いて、Aメロに入った瞬間に、もう客席ができ上がっているんですよ。「あー、来た、来た、来た!」と、グッと感情移入できるから、お客さんも心の底から一緒に歌うことができます。