為末:もう一つは、スタジアムを建築する際、サッカーや陸上競技で使うことだけを想定するのではなく、オリンピックが終わった後も、ずっとコンサートなどにも使えることも視野に入れるべきでしょうね。
中西:その点は僕たちライブ・エンタテインメント側とスポーツ界が、お互いにメリットがあるように、構想の段階からきちんと意見交換するべきだと思います。例えばコンサートでも使うとなれば、機材を運び込む11トンのトラックが横付けできるようなスペースが必ず必要だとか、具体的な条件が明確にありますから、そんなに難しいことではないんです。それとこれはJリーグの中西大介本部長と対談させていただいた時(本誌VOL.17参照)に詳しくお話しましたが、多目的な使用を想定して競技場を建設することは世界的な傾向なんです。アメリカでは、サッカーのスタジアムを建設する時、テーマとして「ノンフットボール・スタジアム」を掲げています。要するにフットボールのためにスタジアムを建てるのではなく、そこに一つ街を作るつもりで発想していくわけです。
為末:アメリカのあるスポーツ協会の方が、事務局のトップを探すにあたって、どこからヘッドハンティングしようとしたかというと、ディズニーやワーナーなどのエンタテインメント企業だったそうです。今のスタジアムのお話も、そういった感覚に近いんでしょうね。
中西:スタジアムを建てるというより、街を作るんだと考えたほうがワクワクするじゃないですか(笑)。