会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

新たに導入されるアドバイザリーボードで伝えられるべき「ACPCの遺伝子」

ACPCの新体制は、役員の顔ぶれに6名の新任理事が加わり、世代交代の印象が強いものになりました。一方で、20年以上の歴史の中で培われた団体としての目標や理念が、きちんと継承されていくことも大事。そのために主に役員経験者で構成される「アドバイザリーボード」が設立されますが、同制度で中心的な役割を担うことが期待される創立時の会長(理事長)・宮垣睦男さんに、団体運営と全国加盟社の若い社員の未来についてアドバイスをいただきました。

どうすれば加盟社全体にメリットがあるか、それが団体運営で最も大事なポイント

「手弁当」から始まった団体

1988年に任意団体としてACPCが設立された当時と現在、最大の違いはどんな点でしょうか。

まずとにかく、みんな若かった。役員のメンバーは30代の方が多く、僕自身は40歳を過ぎた頃でした。それと何より、団体にお金がなかった(笑)。当時は加盟社からの会費だけで団体運営をまかなっていました。それも他団体に比べると格安な金額でしたので、ACPCのために東京へ出張するのにも、全国にいる役員は自費で足を運んでいたと思います。要するに手弁当での運営だったわけです。
それが、井上隆司さん(当時サンデーフォークプロモーション/99年逝去)や永田友純さん(ホットスタッフ・プロモーション)などの尽力で90年に社団法人になり、さらには、その後の粘り強い交渉でJASRACとの団体協定が実現しました。現在のACPCは経済的な余裕もある程度は持てるようになり、団体の収支が健全に保たれることで、人心もついてくる状況が生まれたと思います。

アドバイザリーボードの一員として、現在のACPCのどこに注目していきたいとお考えですか。

JASRACとの団体協定が実現したことによって、加盟社にとっては著作権使用料が(一般の利用者に比べて)減額になるというメリットが生まれましたが、団体にとっても手数料という形で経済的な基盤ができました。このお金をどのように使っていくのか、どうすれば社会に対して、そして加盟社にとってメリットがあるのか、それが団体運営において最も大事なポイントだと思いますし、これから中西健夫新会長を中心に真摯な議論がされていくと思います。
僕自身も、大げさに言えば音楽をビジネスにすることで、長い間ご飯を食べさせていただいてきたわけですから、ライブ・エンタテインメント業界全体にとって有意義な取り組みを考えることで、少しでも恩返しができればと考えています。

ともに成長する喜び

団体の運営についてだけではなく、全国の加盟社の若い社員の皆さんに、何かアドバイスを送っていただけますか。

僕達が仕事を始めた頃は、自分なりにコンサートを企画して、自分がいいと思ったアーティストを地元に招いて、一緒にお酒を飲んで議論しながら、ともに成長するといった経験がたくさんできました。でも、その後、業界も成長して、コンサートというものの形がある程度できあがって、今の若い社員は、その既存の形を踏襲することが仕事の中心になってしまっていると思います。具体的にいえば「委託公演」が多くなったことですが、それは同時にリスクが低くなったことでもある。だから、ACPCの会員社では、昔のようにコンサートの前日に夜逃げしたり(笑)、未払いを抱えた会社はほとんどなくなって、それはそれで間違いなくいいことではありますが、「こんなコンサートを作りたい」という夢や、仕事を成し遂げた時の感動を感じにくくなっていると思います。

「冥利に尽きる」経験

どんな業界でも「草創期のほうが面白い」といわれますが、今、同じような面白さ、喜びを感じるのは難しいのでしょうか。

仕事へのやりがいを感じるためには「イベンター冥利に尽きる」「プロモーター冥利に尽きる」という経験を積んでいくしかないんです。今であれば、全国のプロモーターがフェスをやっているわけですから、例えば自分達が選んだ出演者の顔ぶれで、お客さんに喜んでもらうフェスをやることも一つの道だと思います。自分が担当しているアーティストを出演させるため、うちの社員も会議で「このバンドをどうしても出したい」「絶対に他のアーティストと比べても遜色はない」と演説をぶちますが、かといってフェス全体のバランスを考えて、取り下げることもある。でも、もし出演できて、いいステージを見せてくれたら、うちの社員とアーティストの信頼関係が一気に濃くなりますからね。
以前、あるバンドがライブハウスツアーで四国に来た時に、うちの担当者とメンバーがライブの後、屋台でラーメンを食べて、お酒を飲んでいたそうです。そういう話を聞くと、僕はうれしいんですよ。これが委託公演だと、うちとプロダクションで「この飲食代、どっちが払うんだ?」という話になって、食事も一緒にできなくなっちゃいますから、やっぱり面白さは少なくなりますよね(笑)。


同じカテゴリーの記事

[SPRING.2020 VOL.45] 3つのディスカッションから見えてきた、スポーツとエンタテインメントの接点

[SPRING.2020 VOL.45] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 28 大宮エリー(作家/画家)

[WINTER.2019 VOL.44] イギリスに学ぶ「ライブ・エンタテインメントへのアクセシビリティ向上」

[WINTER.2019 VOL.44] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 27 髙田旭人(株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEO)

[AUTUMN.2019 VOL.43] 新日本プロレス、業績「V字回復」の秘密

[AUTUMN.2019 VOL.43] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 26 村井満(日本プロサッカーリーグ理事長/Jリーグチェアマン)高木美香(経済産業省コンテンツ産業課長)

[SUMMER.2019 VOL.42] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 25 野村達矢(一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事長/株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション代表取締役社長)

[SPRING.2019 VOL.41] チケット不正転売禁止法」が成立した日本の現状を世界のライブ関係者が出席した「ILMC31」でプレゼンテーション

[SPRING.2019 VOL.41] ライブ・エンタテインメントの明日を拓く会

[SPRING.2019 VOL.41] 中西健夫ACPC会長連載対談 Vol. 24 石破茂(自由民主党衆議院議員/ライブ・エンタテインメント議員連盟会長)

もっと見る▶