会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

今が一番大事な時

撮影:宇都宮輝

去る6月20日、東京国際フォーラムG602会議室において、平成23年度ACPC定時社員総会が開催されました。本総会は、22社26名の出席と9社の代理人出席、24社からの委任状の提出により、57社中55社と定数を満たし有効に成立しました。また、総会では任期満了にともなう役員改選が行なわれ、その後の定時理事会にて中西健夫ディスクガレージ代表取締役を新会長に選出。まずは中西新会長の就任インタビューをお届けします。

「ライブ・エンタテインメントにとっても、音楽業界全体にとっても、今が一番大事な時。
ボーダレスはもう当たり前だと思って、次のヴィジョンを考えなくてはいけません」

「守る」より「攻め」の姿勢

ここ数年は、音楽業界内だけではなく、広く一般のメディアからもライブ・エンタテインメントへの注目が高まっています。このタイミングで、ACPC会長に就任されることについて、率直な感想をお願いします。

前向きにいえば大きなやり甲斐を感じていますし、一方では当然プレッシャーも感じています。そういった僕自身の気持ちは別にして、一つはっきりしているのは、ライブ・エンタテインメントにとっても、音楽業界全体にとっても、今が一番大事な時だということです。
ライブ・エンタテインメントを、さらに世間一般に広く認知してもらうことはもちろんですが、マーケットを拡大させるだけではなく、内容をさらに充実させることが大事だと思います。会場に足を運んでいただいた方々に、「ああ、やっぱりライブに来て良かった」と充実感を持ってもらうことを積み重ねていけば、僕は永遠にこのマーケットは存在し続けると思います。そのために「マーケットを守る」という意識よりも、既存の枠組を壊すくらいの攻めの姿勢でいきたいですね。

現在が「ライブの時代」だとするなら、その担い手である「コンサートプロモーターの時代」であるともいえると思いますが、両者はイコールで結べるとお考えですか。

まあ「ニアリー・イコール」くらいの感じじゃないですか。完全なイコールではないと思います。今、音楽業界がボーダレスになってきていることは確かですから、ライブの担い手がすなわちコンサートプロモーターかといえば、そうとは断言できないと思いますし。「360度ビジネス」という言葉に代表されるように—個人的には90度くらいフリーにしておく、「270度ビジネス」のほうがフレキシブルに対応できると思っていますが—レコード会社も音源のビジネスだけをやっている時代ではなくなってきていますし、我々コンサートプロモーターもライブの仕事が主軸ではありますが、アーティストのマネージメントを手がける場合もあります。さらにはプロダクションが所属アーティストのコンサートチケットを取り扱う動きもある。つまり、皆がマルチな業務を視野に入れるようになったことで、何が起こるかわからないボーダレスな時代になってきていると思います。
 そうなると業態によって勝者が生まれるというより、もう各社個々の闘いになっていきますよね。ライブの時代になったのは事実。じゃあ、そのライブの時代を誰が勝ち上がれるかといえば、まさにこれからが重要なのだと思います。ボーダレスはもう当たり前だと思って、次のヴィジョンを考えなくてはいけないんです。

マルチな進化に向けて

コンサートプロモーターの存在が一般的に認知されたきっかけとしては、やはり野外フェスティバル、ロック・フェスティバルの浸透が大きかったと思いますが、曲がり角といわれながら、10年、15年と各フェスの存在感は維持されています。

現場では大変なことも多いと思いますが、各フェスを主催するプロモーターの方々の努力によってキープされてきたといえるでしょう。一方で出演アーティスト側から見ると、フェスという場は複数のステージでのライブが同時進行で行われることによって、人気のバロメーターが明確に示されてしまう面もあります。だから非常にシビアな競争の中で、フェスに出る意味、出てもらう意味をきちんと吟味しなくてはいけなくなっていると思います。
—フェスにも多面的な楽しみがありますが、近年はコンサートプロモーターが手がけるライブが、音楽関連のコンサートだけではなく、エンタテインメント全般にも広がってきています。

フェスにも多面的な楽しみがありますが、近年はコンサートプロモーターが手がけるライブが、音楽関連のコンサートだけではなく、エンタテインメント全般にも広がってきています。

演劇にしろ、スポーツにしろ、『シルク・ドゥ・ソレイユ』のような新しい形のエンタテインメントにしろ、ライブで楽しめる魅力的なコンテンツは様々あるわけですし、そうなっていくのは当然だと思います。以前であれば僕達には関係ないと思えたものでも、どんどん手がけていくべきです。ミュージシャンであり、俳優でもあるというアーティストも数多くいるわけですから、こちら側も進化していかなくてはいけない。一つのカテゴリーで考えるのは、もうそろそろ古いと思うんですよね。
コンサートを中心に担当する音楽職人的なスタッフもいれば、マルチに対応できるスタッフも必要になってきています。それはACPCという団体としてもそうですし、加盟各社についても同じだと思いますね。音楽に関しても、例えば既に話題になっているCD付きのチケット。これを果たしてどうとらえるのか考えるならば、コンサートプロモーターも楽曲の使用申請についてだけではなく、広く著作権の知識が必要になってきますからね。

震災と再結成ストーリー

ジャンルの多様化だけではなく、ライブを楽しむ観客の年齢層も大きく広がりつつあります。

特に最近は、時間に余裕がある団塊の世代の方達に、どんなライブを楽しんでいただくかが大きなテーマになっています。日本のアーティストであれば、キャリア組の息の長い活躍が、このマーケットに対応しているといえますし、海外からは韓流、K-POPという、これまでにはなかったジャンルが一気に押し寄せて、素晴らしいライブ・パフォーマンスで日本人に受け入れられました。
ディスクガレージが手がけたライブでいえば、40代から50代のアーティストの再結成が大きな支持を得ましたが、これはやはり東日本大震災の影響が大きかったと思います。大変な状況を乗り越えるために、日本人がもう一度心を一つにしてがんばらなくてはいけなくなった時、音楽が素晴らしい力を発揮できたのは、僕は本当に誇らしいことだと思っています。チャリティによって義援金を送ることも、もちろん大事ですが、再結成して音楽をやっている姿を見せて、勇気を与えることも同じように大事だと思います。例えば震災チャリティのために期間限定で再結成したプリンセス・プリンセスは、普通の主婦になっているメンバーもいますので、子育てもしながら、もう一度ステージに立つのは大変な努力だと思うんです。その過程も震災以降の日本に向けたメッセージになっているわけで、これもライブ・エンタテインメントの一つの道だと思いますね。

就任直後ではありますが、会長として、ACPCが今後どのような動きをしていくべきか、お考えになっていることはありますか。

ライブ・エンタテインメントの未来を考える団体として、行政側に積極的に働きかけていきたいですね。日本のライブ・マーケットをさらに活性化させるためには、民間だけではなく、国の力も必要になってくると思うんです。例えばライブに関する経済特区を作って、日本のブロードウェイのようなエリアを目指すとか、日本のアーティストが海外でライブをする際の支援を要請するとか、エンタテインメントをよりポピュラリティのあるものにするためには、外的な後押しが大事になってくると思います。

マインドのシステム

中西会長はACPCの人材育成研修会を長く担当されていましたが、最後に加盟社の若いスタッフに何かアドバイスがあればお願いします。

これは自分に対する言葉でもありますが、コンサートプロモーターは勉強をしなくてはダメなんです。今、世の中で何が起こっていて、人々の関心がどこへ向かっているのか、常に勉強しないと、次に進めないと思います。逆にいえば、未知のジャンルに興味を持つ心や、新しいことを始める意欲があれば、誰が何をやってもいいんですよ。
 時代の変化を追いかける一方で、僕らはやっぱり丁寧に仕事をしなくてはいけないことも確かです。各社同じような状況だと思いますが、今はものすごくライブの本数が増えています。それぞれがこなすだけの仕事をするようになってしまった時に、本当の意味で会社はピンチに迎えるのではないでしょうか。それを避けるためには、システムをきっちり作る必要がありますが、システムには、業務を管理するためのシステムと、社員一人ひとりのマインドのシステムがあるんです。一緒に飲んでワイワイやったりする余裕を持つことも、メンタリティの部分では必要だと思いますね。

中西健夫プロフィール

1956年生まれ。81年に株式会社ディスクガレージに入社、97年より代表取締役社長に就任。現在に至る。ACPCでは2001年に理事に就任し、05年より常任理事、08年より副会長を務める。人材育成研修会の担当として、幅広いジャンルのビジネスマン、アーティストなどを講師としてオーガナイズ。また、bay FM『Music Goes On』などでラジオ・パーソナリティも務める。


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