会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

地元雇用を生む「大義と欲」

PROFILE たかた・あきと
1979年長崎県生まれ。東京大学卒業後、証券会社を経て、ジャパネットたかた入社。バイヤー部門、コールセンター部門、物流部門の責任者を経て、2010年にジャパネットコミュニケーションズ代表取締役社長となる。2012年ジャパネットたかた取締役副社長を経て、2015年1月、ジャパネットホールディングス代表取締役社長に就任。2019年には通信販売事業に加え、スポーツ・地域創生事業をもう一つの柱とし、更なる取り組みを進める「リージョナルクリエーション長崎」を同年6月に設立、代表取締役社長に就任し、現在に至る。

髙田:「長崎スタジアムシティプロジェクト」の全体像としては、スタジアムに加えて、5000〜10000人規模のアリーナと、400室のホテル、オフィスは2フロアくらいあって、あとは商業施設。できれば大学も誘致したいと思っています。さらには長崎の夜景が有名な稲佐山に登るロープウェイの駅を、スタジアムの中に設置したいですね。

中西:雇用を生むという意味でも、今おっしゃった「街づくり」の感覚が鍵になってきますよね。

髙田:自社でもこのプロジェクトに向けて、2020年4月に14人、長崎で新卒採用します。新卒はグループ全体で50〜60人採るんですけど、そのうち14人は、このプロジェクトに関わりたいという人で採用を決めました。

中西:長崎は人口の流出が激しい地域だそうですが、若者をただ引き留めようとしても僕はあまり効果がないと思っていて、他県の若者を含めて「そこに行きたい、働きたい」と思わせるような街づくりをするのが理想じゃないでしょうか。

髙田:私はよく社内で「大義と欲」の話をするんですが、「地元を盛り上げるべきだ」「人のためにこうするべきだ」という正しい大義に、個人の欲を満たすものがセットにならないと人は動かない、ムーブメントは爆発しないと思っています。スポーツによる地域の創生を目指す際にも、スポンサーがお金を出す大義も大切ですが、出資することでこういう得をした、こんなに楽しかったとスポンサーの方々の欲を満たすことをしないと絶対成功しないと思います。それはつまり、お金を出したいと思わせる中身をちゃんと示せるかということですから。

中西:街づくりについては、シンガポールのタンピネス・ハブ(前号参照)というお手本もあります。あのエリアが素晴らしいのは、子供からお年寄りまで受け入れられる施設が揃っているところです。

髙田:海外でいえばロンドンへ視察に行きましたが、キャッシュレススタジアムは想像以上に便利でした。色々なことが簡単で。

中西:もちろん簡単なほうがいいんですが、まだまだ日本ではキャッシュレスという概念自体が受け入れられないですよね。

髙田:確かにそうですね。でも、例えば1日2万人お客様がいらして、その半分の人が支払いでお釣りをもらうとすると、2回ずつの買い物で1日2万回、小銭を数えて出すという動作をやっていることになる。それはかなり手間ですよね。キャッシュレスを貫いたら、オペレーションの費用も落とせますし、みんな楽だと思います。そういうアプリの開発も、既に始めていますし。

中西:そういう新しい試みをぜひ貫いてほしいです。

アーティストが公演したくなる付加価値

髙田:それと来ていただくお客様だけではなく、出演者であるアーティストやコンサートをつくり上げている方々にとっても楽しいアリーナ、楽しい場所にしたいとも考えているんです。例えば出演者の家族の皆さんが観るスペシャル席をちゃんと用意しておこうとか、ホテルまで行く時の導線はこうしようとか。そういう工夫をして、出演者の方にも選んでもらえるようなアリーナをつくりたいですね。
現状では残念ながら、長崎で全国的に著名なアーティストの方の公演はなかなか行われないのですが、たまにコンサートでいらした時にお話しすると、長崎に対して良い印象は持っていただけているような気がするんです。私はコンサート業界の構造を詳しく把握しているわけではないので、本当のところは分からないのですが、全国規模で収益性を比較すると難しいのかもしれませんね。ただ、シンプルに稲佐山に8000人が集まって、みんなで素晴らしい音楽を楽しんで、お客様も出演者も幸せな気持ちで帰っていただくことはできると思っていて、コンサート業界のプロではないからこその視点で大物アーティストの公演実現に動いてみようかなと思っています。

中西:要するに付加価値なんですね。例えば収益性では決して高いとはいえない沖縄に、多くのアーティストが足を運んでいます。ツアーファイナルは沖縄ということが多いんです。コンサートが終わって、遊んで帰る。これはものすごく大事なことで、アーティストやスタッフの欲望が収益性に勝っているわけです(笑)。長崎も港はあるし、海産物は美味しいし、景色は素晴らしいわけですから、充分に付加価値はあると思います。

髙田:スタジアムシティにあるホテルには、出演者用のスイートルームをつくろうと思っていまして、気に入っていただければ「また長崎に来よう」と思ってもらえるかもしれませんね。


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