会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

プロマックス

2010年4月17日と18日、国立代々木競技場 第一体育館にて行なわれた「LEGEND OF RAINISM 2009/2010 ~RAIN ASIA TOUR JAPAN FINAL~」 (C)J.TUNE ENTERTAINMENT

昨年起きたK-POPブームの10年以上前、90年代後半からアジア各国とのネットワークを築き、多くのコンサートの企画・制作・招聘を手がけてきたのがプロマックスです。台湾のF4、韓国のRAIN(ピ)といったビッグネームの大規模な日本公演を成功へと導いただけでなく、ソン・シギョン、シン・スンフン、フィソン、チョ・ソンモ、キム・ジョングク、ALEXなど、バラードやR&B系の実力派シンガー達のライブを着実に行ない、韓国アーティストの幅広い音楽性を日本に紹介。坂本龍一や久石譲の韓国公演もオーガナイズするなど、日本のアーティストの韓国進出もバックアップしています。遠山豊社長を中心に、アジア関連の公演を担当することが多い天野奈々さん、韓国以外でもフィリピンやイギリスで暮らした経験を持ち、約10年前に来日、プロマックス入社後は制作全般を担当している朴雄熙さんにお集まりいただき、K-POPのコンサート市場の現状、ビジネスの進め方の違い、日韓ライブ交流の行方などについて伺いました。

根づき始めたコンサート文化

代表取締役社長遠山豊

1月9日に坂本龍一さんのソウル公演が終わったばかりですので、まずはそのお話から伺えれば。

朴:2000人クラスの会場での2回公演でしたが、坂本さんは10年前にもソウルでコンサートを開催していて、その当時からのコアなファン、そして10年間で新しいファンも加わり、無事成功させることができました。

坂本さんも久石譲さんも、インスト曲が中心なので、受け入れられやすいという面もあるのでしょうか。

朴:それもあると思いますし、韓国はもともとニューエイジや現代音楽などのインスト曲には、ある程度のマーケットがあるんです。

遠山:今回気づいたのは、10年前より若くてハイブロウな観客が増えてきたということです。おそらく、日本でのコンサートの時より観客層は若いんじゃないでしょうか。韓国はこれまでコンサート文化が定着していないといわれてきましたが、坂本さんのソウル公演を見て、韓国でもやっと根づき始めたかもしれないと思いました。それは韓国のアーティストが頻繁に日本で公演をするようになって、日本のやり方に影響されながら、近年のCD不況からの活路をコンサートに見出し始めている面もあると思いますね。

天野:例えばスタッフでも30代前半の責任者がいたり、新しく会社を興す人もいて、若くなっています。そういった方々は、日本やアメリカへ留学経験があったりするので、日本のコンサート関係者と感覚的に近いところもあります。

チーフプロデューサー天野奈々

K-POPの日本進出に話を移すと、現在のライブの市場はどのようになってきているとお考えですか。

遠山:ジャンルが多岐にわたっていますので、一括りに傾向を語るのは難しいですね。マーケットという意味では、現状はアイドル系のものが圧倒的であることは間違いありません。一方で小規模でも着実に音楽的なライブ活動をしているアーティストもいます。

それはかなりのレアケースなのでしょうか。

天野:私は韓国のバラード系シンガーを担当することが多いのですが、このジャンルはドラマのOST(サントラ)から火がついて、大規模なコンサートができる場合もあるんです。でも、最近はOSTのヒットがなくても、ライブハウスから始めて、口コミでお客さんが増えていく例もありますね。

遠山:日本の商慣習との違いで代表的なのは、韓国は常にショートタームでビジネスを進めるということです。ある会社がアーティストと2年間のエージェント契約をしたとして、その期間でどこまで成果を挙げるかということがビジネスの主眼になります。日本のように一から市場を掘り起こしたり、プロモーターが長年同じアーティストのコンサートを手がけるのは、なかなか難しい。ロングレンジで物事を見ていくには、集約されたコントロールの機能が必要ですが、そこが持ちづらいんですね。

朴:民族性も関係あると思います。韓国にはなんでも早く進めようとする文化がありますから。例えばミーティングでも、日本だとじっくり2時間かける内容でも、韓国だと30分で終わります(笑)。これはどちらが良いとか、悪いとかの問題ではないでしょうね。

遠山:現在のK-POPは、急激に市場が広がっている段階ですので、ある種の混乱状態であることも確かで、仕事の成立過程も様々です。弊社の場合も、ダイレクトに韓国側アーティスト・マネージメント、コンテンツホルダーと契約し招聘、プロモートまで手がける場合もありますし、韓国側も含めた複数社によるコンソーシアムで主催/企画制作を行なう場合、韓国コンテンツの日本側代理人である法人(マネージメント、放送局など)を経由する例、イベントの制作業務だけを請け負うケースなど、その業務のスタンスがすべて異なるので注意点も一概にはいえません。やはり韓国側で色々なルートや窓口が存在し、交通整理がなされていないコンテンツに近づいていく時に注意点は増えるでしょう。日本における独占的な代理人である日本側法人から供給されたものを、ツアーとして各地で公演を行なう場合は、それほど難しさはないんじゃないでしょうか。

韓国で生まれた日本の再評価

第1企画事業部朴 雄熙

日韓ライブ交流の今後の展望をお聞かせください。

朴:自分が1人の音楽ファンだった時代を考えると、例えば坂本龍一さんの時でも「こういうコンサートが韓国でも普通にできる時代になったんだな」と思うんです。韓国では今、国のバックアップを含めて、一生懸命コンサートに関する環境を整えようとしていますので、日本のアーティストをどんどん韓国に紹介できればと思います。

天野:私は12年間くらい、韓国のアーティストのライブを日本で行なう仕事をしていますが、今後もそれを続けながら、日本のアーティストを韓国に紹介する仕事もやっていきたいですね。ファッションやアニメをライブとコラボさせたり、日本独自の文化を広くアジアの国々にアピールしていければと思います。

遠山:日韓の間には、確かに民族性や商習慣の違いがあるのですが、やはりそこには特別な関係があって、今後も両国で共有できる音楽市場が形成されていくと思います。ドラマから始まった韓流ブームが高齢層を魅了して、昨今のK-POPブームがティーンエイジャーまで広がったことを考えると、3世代にわたって浸透しているわけですから。日本が高度成長を遂げている間に、韓国は経済的に沈んでいた時期がありましたが、ポップカルチャーのジャンルで肩を並べる段階になった時に、日本はちゃんと韓国の音楽を受け入れました。その垣根のなさ、先入観のなさを、日本のオーディエンスや音楽業界が持っていることを、韓国の音楽業界や経済界の方々は知っていて、日本の再評価が生まれています。だとするなら、今度は日本から韓国へという次の形も当然あるだろうと考えています。


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