会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

ACPC人材育成研修会 ダイジェスト1

会場となったホールでも会議室でも、熱心にメモをとる加盟各社の若手スタッフの姿が多く見受けられました (撮影:小嶋秀雄)

来場できなかった方のために内容のダイジェストをお届け

去る3月1日、平成21年度ACPC人材育成研修会が、SHIBUYA-BOXXにて開催されました。今年度の特徴は、各ジャンルの専門家の方々による、より実務的なビジネス講演が揃ったこと。開催よりだいぶ時間が経ってしまっておりますが、コンサート・プロモーターの仕事に不可欠な内容、ライブ・エンタテインメント業界の現状を把握するために必要なデータも多く含まれていましたので、会場に足を運べなかった方のために、当日の様子をレポートしつつ、主な講演のダイジェストをお届けいたします。

明日から使えるスキルと情報

ACPCの人材育成研修会といえば、一昨年は設立20周年のセレモニー的要素が加味され、昨年は加盟各社の交流にも多く時間が割かれていましたが、今年は本来の目的である「人材育成」を最優先し、より実践的な講演がラインアップされました。冒頭で山崎芳人ACPC会長が語った内容(要約は下記)も、講演前の「ご挨拶」というより、ACPCとライブ・エンタテインメント業界の現状を整理する「基調講演」に近いもので、スタートから各種データを駆使したスピーチになりました。

続く講演はいずれも、各ジャンルの専門家の方々が、コンサート・プロモーターの業務に必要なスキルと情報を伝える、まさに明日からの仕事に直結した内容。JCBサービス代表取締役社長・宮竹直子さんの「心をつかむビジネス・コミュニケーション」では、お客様からのお問い合せに、日々対峙する窓口担当者にとって必須のノウハウが語られました。一昨年の人材育成研修会でも行なわれた宮竹さんの講演は、加盟社からのリクエストも多い人気プログラム。音楽業界の他の業態と比較して、コンサート・プロモーターはお客様と直接コミュニケーションをとる場面が格段に多いにもかかわらず、専門家のアドバイスを受けられるチャンスはなかなかないだけに、今回も多くの参加者が熱心に聞き入っていました。ぴあ総合研究所の主任研究員・笹井裕子さんの「エンタテインメント産業の現状」は普段、自社の担当公演に追われている方にとって、ライブ・エンタテインメント全体、さらには娯楽・文化産業全体に視野を広げるいい機会になったのではないでしょうか。また、様々なエンタテインメントやレジャーがある中で、オーディエンスのニーズがどこにあるのか、なぜ、お客様は会場に足を運んでくれるのか、その原点を確認できる講演でもあったと思います。ビクターエンタテインメント代表取締役社長・斉藤正明さんの「レコード会社とコンサート・プロモーター」をテーマとした基調講演は、中西健夫ACPC副会長との対談形式で行なわれ、トークは縦横無尽に広がりました。全講演の中でも最もリラックスした雰囲気でありつつも、レコード会社とプロモーター、それぞれの業態を代表して突っ込んだ質問をぶつけ合う場面もあり、音楽業界のトップの本音が聞けたという意味では、若いスタッフにとっては貴重な時間になったようです。そして最終枠の講演は、日本舞台技術安全協会(JASST)理事長・清水卓治さんの「舞台安全について」。舞台の設営から撤去までの過程で、これまでに起きてしまった事故の実例を映像とともに説明し、安全対策の必要性を語る清水さんの言葉からは、ライブの現場で働くスタッフでも気づかないことがあるシビアな現実が伝わり、参加者の皆さんも安全への思いを新たにしたようです。

以上の4講演については、内容の要約を次ページに掲載しておりますので、ご一読いただければと思います。また、その他、リンクアンドモチベーション社による「関西・東海エリアマーケティングリサーチ報告」、JASRACの方々とACPC事務局も加わり、楽曲使用申請の実務について話し合った公開会議も行なわれたことをご報告いたします。

ACPCの活動とライブ・エンタテインメント業界の現状

山崎芳人ACPC会長による報告

数々のデータをモニターに映し出しながら、業界の現状を分析する山崎会長

この1年間のACPCの活動、ライブ・エンタテインメント業界の現状のご報告をいたします。

ACPCは2010年2月の時点で正会員56社、賛助会員103社で構成されています。

事業内容についてはその都度ご報告していますが、主に業界内に向けた活動として会報誌の発行、人材育成研修会の実施、JASRACとの団体協定に基づく著作権使用申請・支払い等の代行を行なっています。それ以外に消費者へ向けての活動として、旧厚生年金ホールの存続支援、コンサートツアー事業の市場規模調査、東京工科大学や立命館大学での寄附講座といった教育機関への人材育成・支援事業、舞台安全に関する調査研究、偽造チケット対策、AED設置に関する調査、新型インフルエンザへの対応等を行なっています。

コンサートの演奏における著作権使用料ですが、ACPC正会員56社は「演奏会等」分野における全体の3分の1のシェアを占めています。

事業活動収入として、会費収入、事業収入、雑収入等があり、約1億3000万円で運営しています。

ACPCによる加盟社の市場規模調査によりますと、2008年度は15,522公演が行なわれて、公演数は前年比107%。動員数は前年比107%の2253万人。年間の売上高データは前年比103%の約1074億円。いずれも順調に増加しています。

ACPCによる調査に加えて、クラシック等も含む『ぴあライブ・エンタテインメント白書2009』も参考にすると、動員数にチケットの平均価格を乗じた市場規模は約1500億円。一方、音楽CDの売上が2008年度は約2500億円で、少しずつ下がってきているのが現状です。

JASRACによる「演奏会等」分野の著作権使用料の集計から、ACPC加盟社は業界全体の33%、約3分の1のシェアを占めていると予測されますから、その3倍として計算すると、ライブ・エンタテインメント業界全体の市場規模は3000億円規模にまで大きく広がっているのではないかと考えられます。音楽CDにDVD等を加えた市場規模は約3600億円という状況なので、ライブ・エンタテインメント業界は音楽ソフト市場とほぼ同規模まで成長をしてきたのではないかということが各資料から窺えます。


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