会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

私達はフェスをなぜ始めた(る)のか、私達のフェスはどこへ向かっているのか。

歴史も開催エリアも対照的な二つのフェス

「WORLD HAPPINESS」ロゴ

全国プロモーターの多くがフェスを手掛けている現在、各社によって始めたきっかけ、今後の展望は様々でしょう。今年7月26〜27日で9回目(広島県庄原市の国営備北丘陵公園では6回目)の開催を終えた「SETSTOCK」。8月10日、東京都江東区の夢の島公園陸上競技場で初開催を迎える「WORLD HAPPINESS」。歴史も開催エリアも対照的な二つのフェスに関わるスタッフに「うちの場合」をお伺いしました。

「SETSTOCK'07」の会場。

フェスが柱になることで、広がるネットワーク

SETSTOCK

広島

高波秀法

(夢番地 広島オフィス/右)

澤 弘道

(夢番地 岡山オフィス/左)

高波:野外フェスを自分達も独力で制作していけるな、と思えるようになったきっかけは、96年のウルフルズ、奥田民生、スピッツが揃ったイベント「ガッツな息子がキラリ☆」(鳥取県境港市)だったと思います。アーティストからも好評で、動員も4万5千人、僕らもいい感触をつかめた。スポンサーありきの大規模な営業イベントは、当時から全国で開催されていたと思いますが、その経験にプラス、FUJI ROCKのような新しいフェスのやり方が見えてきたことで、自分たちにも「できる」と。

澤:東京発の全国ツアーをサポートする仕事が多くなると、単純にいえば、それだけじゃ面白くないというか、やっぱり自分達でイニシアティヴをとったイベントを立ち上げたくなりますよね。それにフェスというプロモーションの柱がつくれると、ネットワークが広がってきます。SETSTOCKを取り上げたいといってくださるメディアの方、協賛をしてくださる企業の方、運営面をお手伝いいただく業者の方、皆さんSETSTOCKがあることによって、夢番地という会社に興味をもっていただける面はあると思います。もし、SETSTOCKがなかったら、こちらからプロモーションのお願いをするだけだったのが、対等な形で仕事ができるチャンスが増えました。

高波:今後のことでいえば、お客さんの年齢層を少しずつ引き上げていければと思います。全国でこれだけフェスの日程が過密になって、新しいイベントも立ち上がっている状況になると、当然他との差別化が永遠のテーマになってくる。やはり独自のラインアップ、雰囲気づくりが必要になるでしょう。

澤:イースト、ウエスト、神楽殿と3ステージがあって、コンパクトなエリアにすべてが集約されているところがSETSTOCKの特長。だから年齢が上の方も場内を無理なく移動できますし、ステージが見やすいと思います。客席はすべて芝生で、イーストはすり鉢状の構造。ライブ中もリラックスできることを今後はより活かしていきたいですね。

家族連れに向けた「音楽がある移動遊園地」

WORLD HAPPINESS LOVE&MAMMY AND SOMETIME DADDY

東京

青山栄一

(ホットスタッフ・プロモーション)

現在、主流になっている大型フェスで、継続的に都心で開催されているものはありません。東京のお客さんは全国各地や近郊に出かけていってフェスを楽しんでいるのに、身近なエリアでは開催されていないんです。もちろん、都心で開催されていないのには理由があって、行政側の規制が厳しく、適当な開催場所が見つからないのが最大の問題でした。
今回、WORLD HAPPINESSの開催に向けて動き出せたのは、夢の島という場所が見つかったことが大きいんです。ただし、夢の島公園陸上競技場で、言葉通りの「ロック・フェス」ができるかというと、騒音問題などでやはり難しいんですよ。だから「大人のお客さんが家族連れで公園に遊びに来るような感覚で楽しめるフェス」というコンセプトが生まれてきたんです。ここでイベントのキュレーターを務める高橋幸宏さん、信藤三雄さん、企画制作のON THE LINEとヒンツ・ミュージック、そして弊社、主催のテレビ朝日とJ-WAVEが考えていたことが合致して、構想がスタートしたんです。
WORLD HAPPINESSは大人のお客さんの動員を想定したアーティストを中心にラインアップしていますが、それだけで動員に結びつくわけではないと思います。継続的な開催を目指すには、フェス自体を体感してもらって、楽しんでもらうことに我々も注力しなくてはいけないでしょう。そのためには飲食の充実や環境の整備、WORLD HAPPINESSであれば託児所の設置などが大切になってきます。これはフェスに関わるプロモーターは皆、考えていることだと思いますが、メインのコンサート以外の部分を充実させないといけない。もちろん音楽とは切り離せませんが、極端にいえば「音楽がある移動遊園地」を目指したいと思います。とはいえ、今回が第1回ですので、僕らもまだ、このやり方で本当にお客さんに喜んでいただけるのか、自信がないんですよね(笑)。だからまず、できることから始めようというのが正直な気持ちです。


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