会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

音楽と美術、若者と美術の架け橋になりたい

PROFILE おおみや・えりー
1975年生まれ。作家、画家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナー。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。主な著書に『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ』(毎日新聞出版)、『大宮エリーのなんでコレ買ったぁ?!』(日本経済新聞出版社)、写真集に『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)、画集『EMOTIONAL JOURNEY』(FOIL)、絵本に『虹のくじら』(美術出版社)、絵本『ハートのレオナ』(MISIA作/主婦と生活社)など。監督を務めた映画に「海でのはなし。」、舞台の作演出を手がけた作品に「GOD DOCTOR」(新国立劇場)、「SINGER 5」(紀伊国屋ホール)、脚本・演出を手がけたテレビドラマに「木下部長とボク」「ROOM OF ING」「the波乗りレストラン」など。「emotional journey」(代官山・ヒルサイドフォーラム)、「シンシアリー・ユアーズ」(十和田市現代美術館)、「Peace within you」(小山登美夫ギャラリー)など絵画の個展も次々に開催。「les beaux jour」(パリ)、「A Wonderful Forest」(香港 TICOLAT TAMURA)に続き、ロンドンでの個展も控えている。

大宮:実は私、3歳からバイオリンを習っていまして、TBSの音楽番組の司会をやっていたことがあって……。

中西:ちょっと待ってください、僕も3歳からバイオリンをやっていましたよ。

大宮:えー! じゃあ、2人でバイオリンのバンド組んじゃいます? 

中西:始めたのが3歳からと全く一緒で、驚きました。すみません、お話を続けてください。

大宮:高校生くらいでやめていたんですが、ミュージシャンの友人や先輩方がその話を面白がってくれて、フェスでも演奏することになっちゃって。(恐縮すぎなんですが…)司会をやらせていただいていたTBSの番組では、坂本龍一さんとセッションまでさせていただいてしまい…また恐縮…。ヤバくないですか? もう絶対、視聴者の方々からクレームが殺到すると思ったら、案の定いっぱいきました(笑)。坂本さんは東京国際フォーラムでライブも観ましたが、素晴らしかったです。バックにオーケストラがついていて、演奏者がみんな違うことをやるんです。バイオリンって、ファースト・バイオリン、セカンド・バイオリンが同じ音を出すので、同じパートが20人いても1本の音に聴こえるのに、みんなが細かく違う動きをしたんです。だから細胞がうごめいているように聴こえて、ゾワーッときました。もう完全にアートでしたね。アイスランドで、ドゥーンドゥーン系のフェスに出ている坂本さんを観たこともあって……。

中西:EDMのフェスですね。

大宮:「ドゥーンドゥーン」でよく分かりましたね。

中西:一応、コンサートプロモーターなので(笑)。

大宮:色々なホールでドゥーンドゥーンって大きな音が鳴り響いている中で、坂本さんは超小さな音でピン……と演奏するんです。最初は聴こえなくても、続けていると客席のみんなが集中して聴くようになっていく。そのライブも驚きました。私だったら他のホールに負けないように、大きな音を出そうとしちゃいますが、坂本さんは心が強い、強靭な精神だと思いました。

中西:大きな音だと余計に紛れてしまうんですよね。小さい音は耳を研ぎ澄ませないと聴こえないので、観客はより集中することになる。坂本さんはおそらくそこまで考えて演奏されていると思います。

大宮:なるほど。私もコンサートに行くなら、クラシック系というか、音の響きが心地いいホールがいいですね。東京国際フォーラムも好きだし、サントリーホールや新国立劇場の小劇場、オーチャードホールにも行きます。残念なのはドリンク。ライブハウスと違って、ホールはあまり飲食がありませんよね。ロンドンのコンサートホールだと飲みながら観るのが当たり前なのに。

中西:バー自体がないところがほとんどですからね。

大宮:ロンドンだと『オペラ座の怪人』でも、みんなシャンパン飲んで、酔っぱらって観ていますから。日本だとミュージカルを緊張して観ている感じですよね。

中西:エンタテインメントですから、酔って観るほうが楽しめることも多いんですよ。

大宮:感情がほぐされて。

中西:日本人はもともとシャイなことに加えて、なんでもかしこまってしまうというか。

大宮:それと『オペラ座の怪人』もそうですが、高い席から安い席まで、チケットがある。すごく安く買える席もあるから、学生でもオペラを観られるんです。若い人にとっては、もちろん爆音で盛り上がれるフェスが楽しいと思いますが、それだけじゃなくて、オペラを観にいこうよ、ミュージカルも観にいこうよ、落語もクラシックも聴こうよ、となったほうがいいと思うんです。

中西:どんな芸術にもライブ・エンタテインメントはあるわけだから、そのあたりをちゃんと僕らもエデュケーションしていかないといけないですね。

大宮:そうですね。美術館でも、日本だと年輩の方がゴッホなんかを鑑賞するイメージじゃないですか。海外では子供達も多いですよね。若い子達にもっと高級なもの、上質なものを知ってもらう仕組みを考えないと、日本がダメになってしまう気がしているんですよ。

中西:人が自分の手で生み出すものの素晴らしさを知ってほしいですね。

大宮:私は各地のフェスでライブ・ペインティングもやっているんです。例えば道後温泉の町おこしみたいなところに、矢井田瞳ちゃんを誘って、彼女が歌っている隣でバーッと絵を描いたりして。客席を見ていると若い子がウェーンと泣いているんです。「なんで泣いているんですか?」と聞くと「わからない。なんかピンクの色を見ていたら泣けてきちゃいました」って。そういう経験をすると絵がすごく近い存在になる。次に「美術館に行ってみようかな」となるんですよ。美術を好きになるきっかけというか、架け橋になりたいですね。

中西:最後に未来に向けたいいテーマを示していただきました。


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