会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

2019年には大型台風の上陸が相次ぎ、全国各地で多数の公演がやむを得ず中止・延期されましたが、2020年は新型コロナウイルスの発生により、未曾有の規模で公演の中止・延期を余儀なくされています。新型コロナウイルス感染症に関しては、いまなお事態が進行中のため、本号では別ページ(http://www.acpc.or.jp/magazine/navi_issue.php?topic_id=371)で本会の取り組みの一部をお伝えすることとし、ここでは前号に続き、会員各社よりいただきました自然災害への対応アンケートの結果をお伝えいたします。近年の地球温暖化の進行により、世界的に台風や大雨といった自然災害が増加傾向にあり、今年の夏も各地で大きな災害が起きる恐れがあります。自然災害にも急ぎでの対策が求められています。

※アンケート結果のQ1「自然災害により、公演を中止・延期する際の判断基準」、Q2「公演の中止/決行の判断を告知する、おおよそのタイムリミット」、Q3「災害対応として、各社で始めた取り組み」については前号(VOL.44)に掲載されております。
http://www.acpc.or.jp/magazine/navi_issue.php?topic_id=357

ACPC会員社が関連する公演への影響

2019年に自然災害が原因で中止・延期された公演数の合計中止 112本
延期 95本
災害がない場合に見込まれた動員約54.3万人
災害がない場合に見込まれたチケット売上約52億円

2018年は全国で中止32本、延期47本だったため、公演数として約2.6倍もの増加となりました。さらに中止・延期への対応業務でも大きな影響が生じています。

会員社への災害対応アンケート結果

前号に続き、会員24社からいただいたアンケートの回答をまとめました。紙幅の都合ですべての回答を掲載できず、何卒ご了承下さい。

【Q4】対応で優先していること、対応に迷ったことなど

自由記入欄へのご回答から、トピックごとに分類しました。今後も追加調査を行い、会員社の皆様にご案内差し上げます。

災害対応で優先していること

・安全確保、人命よりも優先される事象は無いことを常に意識

・とにかく落雷等による被害を受けないように、人命優先を 第一に考えて対応する

・無理をしない

情報収集について

・昨今の計画運休には非常に影響を受ける為、情報収集を迅速且つ正確に行う必要性を感じる

・会場関係者より最寄りの駅に掛け合ってもらい、計画運休情報を発表前に得ることができたので、非常に早いタイミングで中止の告知ができた。今後もそういった連携を強化していただけると助かる

・近年は大型台風などの場合、保険会社からの進路予測などを頼りにして開催判断を行うケースが増えている

・サイトの天気予報を見ても、どれもまちまちな事があるので、全ての情報を把握した上で、総合的に判断する

・我々が情報収集に利用する専門的な機関のみで判断しない。来場者は基本、天気予報レベルの情報しか得ていないため、あくまで一般的な感覚で最終判断する

災害対応に感じること

・年々中止判断が早くなっており、逆に無理して開催する事へ の批判が強くなっているように感じる。また、台風・豪雨など の災害が想定以上に大きくなっているので、経験値だけで の判断も危ないと考える

・最近の状況として交通機関が非常に早く運休を判断する ため、結果的に開催可能な状況でも中止せざるを得なく なっている。延期可能な公演であればいいが、その日しか 出来ない公演が多い中、楽しみにしているお客様にとっても 残念だと感じる

・中止・延期の判断も払い戻しの可否も、一定の基準が必要 だが、その基準だけで全て線をひいてしまうのは乱暴で あり、性善説に基づいた個別相談を受ける応対も欲しい

・社会的にも1社だけの問題ではなく、音楽、舞台、イベント界全体の問題なので広く情報共有していければと思う。ただ、実施するしないは、個々のアーティスト、マネージメント、プロモーターの判断だと思うので、その点では各社に判断を委ねる形を残した方がいいと思われる

・公演の延期・中止の判断の難しさがあり、それによるチケットの紛失や、破損の対応にも各社で差が出ているのが現状だと感じる

対応で迷ったこと

・週末(土日の電話対応ができない場合)の情報発信・方法

・アーティストなどによるSNS発信が早く、プロモーター側が後手に回った場合のクレームなど

・チケット購入者への中止・延期連絡をどこまで実施するか(一人一人にTEL・メール配信など)という判断と、中止を知らずに来場されたお客様に対する責任の所在について、各社どうされているか知りたい(過去にプレイガイドからお客様へ連絡することになっていたが、案内が徹底されていない事案があった)

・公演エリア外の交通機関が止まった場合、各社どこまで対応しているのか

・フェス等で通し券を販売し、1日中止、1日は開催した場合の払戻方法に迷う。どの部分まで払い戻すのか?ユーザー手数料、払戻方法など

・カード決済など、一部払戻が困難な場合の対応

・主催者による避難誘導がどこまで必要か、そして的確にできているか

・行政・会館等と主催者の管理範囲

災害時に求める情報

・現在の災害の状況、今後の台風の動向などの予測情報、会場の被害等

・JRなどの計画運休情報の共有

・同地区の他会場での開催・中止有無の状況は非常に気になった。弊社内の他のイベントと連携、情報共有しながら判断した

・同じ地域で中止する公演もあれば開催する公演もあるので、他社がどこまで中止にしているか情報が欲しいときがある

・中止または開催の判断材料となる情報が正確になると助かる。ライフラインや交通機関とも密に連絡が取れるようになれないのか?間違った情報で進めてしまうのが一番怖い


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