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プロの「仕事人」になるために

佃篤英(ビッグイヤーアンツ)

ACPCの役員だけではなく、広く会員社の方々にも寄稿いただく「VOICE」のコーナー。今回、原稿を執筆いただいたのは(株)ビッグイヤーアンツの佃篤英さん。ご自身がコンサートプロモーター、イベンターという仕事を選んだ理由、現在の仕事に対する基本的な姿勢に触れていただきながら、これからコンサート業界が辿っていく道への懸念、そして解決への糸口を探った一文です

24歳で芽生えた自主性「プロの集団」を目指して新しい挑戦、日々前進

まずはイベンターという音楽とユーザーをジョイントする職種を開拓して現在に至る、各地区の諸先輩方におこがましいですが敬意を表したいと思います。

私がイベンターという仕事に携わったのは、ライブが観られる、音楽を聴くことができるという単純な理由からでした。しかしながら現実は、想像とは遥かに違う一連の作業の繰り返し。移動、宿泊、ケータリング手配等、音楽とは全くかけ離れたことばかりでした。
 一心不乱に打ち込んで現場をこなしつつ2年が過ぎた24歳の時に、初めて自分の担当アーティストをもたせていただくことができました。この頃から自主独立し、毎年仕事に対する考え方が変わり始めました。

担当アーティストへ対する九州地区、福岡での役目を担っていくものとして、諸先輩方が作り上げてきたアーティストとユーザーをジョイントする、決して損得や自分のためには仕事をしない、すべてのカルチャーに対し消費者よりも多くの情報をもつ、画一化したやり方でなく一人一説をもつ、などです。

担当アーティストに対する考え方も個々で全く異なると思いますが、新人に対しては限界の先にある潜在能力を引き出すことを常に考えております。具体的な場合もありますし、抽象的な場合もあります。厳しい発言もあると思いますが、アーティストの気持ちを考慮して対応するようにしています。

また、どのような世界でも同じでしょうが、失敗しても新しいことにチャレンジをすることが、後のやりがいや面白さに至り、繁栄につながると信じています。より高いモチベーションで仕事に望むためにも必要な要素ではないでしょうか。

コンサートは、自分の中のスター、次世代のスターを作り出し、ファンの方々を非現実的な世界へと導くことができる素晴らしい仕事だと思います。ですから各都市で仕事の術を備えたプロの集団を作れるよう、日々前進を試みる挑戦をみんなでしていきましょう。

避けられない市場の縮小「現実」を把握しながらより具体的な高い志を

もちろん現実もきちんと把握していかなくてはなりません。この業界に対する個人的見解ですが、プロアマの垣根の曖昧な業界ですし、音楽が好きという思いで就職した私の22歳の頃とは違う、安定した一企業として入社した若年層の方には申し訳ないのですが、以前に比べると確実に市場は縮小し、この先もさらに縮小する流れを早めにシミュレートする必要があるのではと考えております。

コンサート業界のトータル動員数、売り上げはともに右肩上がりですが、リピーターが多く単純に市場が広がったとはいえないでしょう。コンサート1本に対する利益率低下に対し、人動力は大きくなる一方です。利益と稼働時間を相殺して考えても、決して喜ばしい結果ではないはずです。現状とこれから先を踏まえて、今一度皆で考えるべき時ではないでしょうか。
他種大手企業が合併淘汰されるなか、我々に関連する職種の企業は細分化していく傾向にあります。独立や起業した方々の思想に上記のヒントがあるのかもしれません。

 信頼を置かれる人材は、苦労をして手にした財産や成功体験を重ねる努力を惜しまないし、他人に見せることも自慢することもしないでしょう。私も常に初志貫徹の気持ちを念頭に置いて、これからはより具体的な高い志を掲げていき頑張ってまいります。

佃篤英プロフィール

つくだ あつひで
1968年12月21日、福岡県出身。91年、株式会社ビッグイヤーアンツ(BEA)入社。


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