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大場高士(キャンディープロモーション)

ACPCの役員だけではなく、広く加盟社の方々にも寄稿いただく「VOICE」のコーナー。
今回、原稿を執筆いただいたのはキャンディープロモーションの大場高士さん。アルバイト時代に発見した音楽の仕事に携わる「おもしろさ」と「喜び」、社員になって手探りで仕事をする日々で感じた「いちイベンターの役割と使命」をご自身の仕事史に沿って綴ってくださいました。

私が「イベンター」という仕事に携わり、今年で6年目になります。きっかけは「コンサートのアルバイトをしないか」という友人の誘いでした。それまでコンサートを見に行ったことがなかった私は「どういうことをするのか」と興味を持ち、未知の世界に飛び込みました。そこで私は「音楽の仕事」の魅力を全身で感じ、この仕事をやっていきたいと心底感じたのです。

音楽業界で初めての仕事は、先輩方の指示に従うだけでした。指示通りに仕事をしていると、次第にセットが組まれ、スピーカーから音が出て、照明のシュートが始まり、それぞれのセクションごとに多くのスタッフがいることを私は目の当たりにしました。細かい調整やリハーサルが行なわれ、あっという間に開場時間を迎え、開演するとこの日を待ちに待ったというお客様の期待は爆発。アーティスト、スタッフ、お客様が1つとなり、ホール内は非現実の世界へと変わり、その場にいる全員がこの空間と時間を全身全霊で楽しんでいることに、今まで感じたことのない衝撃を受けました。この瞬間、音楽の仕事の「おもしろさ」を見つけ、さらに大満足で帰路に着くお客様から「喜び」を教わり、こんなにやりがいのある仕事にはもう出会えないと自分に言い聞かせ、続ける決意をしたのです。

そのままアルバイトを続け、会場の運営をしていました。やはりコンサートごとに違うホール内の雰囲気は自分にとって本当に心地よく、さらにお客様の笑顔を見ると、音楽の持つすばらしい力を感じずにはいられませんでした。色々な業界や仕事がある中でも、「音楽の仕事」は特別なのかもしれないという思いが生まれてきたのです。そして会場の運営以外の仕事もあることを知り、幅を広げたいと思った私は、アーティスト・スタッフの送迎もするようになりました。そこで満足することなく、新しい仕事を求め続けながら、与えられた仕事も一生懸命こなし、同時に今まで全くわからなかった音楽も自ら知っていくことを心がけていきました。仕事上、多くのアーティストに係わる時間が増えたことで、少しずつ興味を持ち始めたのです。その私の姿勢を認めてくれた先輩が、社員、つまり「イベンター」をしないかと声をかけてくださいました。社員としてこの仕事を続けられるというこんなに嬉しいことはありません。今まで培ってきた思いや情熱を生きたものにすることを目標に取り組んでいくことになりました。

「手伝い」と社員の違い

しかし、社員として本格的に仕事を始めると、やはりアルバイトの仕事との違いに戸惑いました。自分が今までしてきたことはほんの「手伝い」だったことに気がついたのです。いちイベンターとしてやるべきこと、それは担当するアーティストを持ち、制作スタッフとコンサートの立ち上げ段階から終わるまでの過程を作り上げていくことでした。そこはアルバイトの立場からは見えない部分だったため、先輩を真似、手探りで仕事をする日々が続きました。

仕事に追われながらも慣れてくると、プロモーションをする度にアーティストはもちろん、音楽に込めた想いやこだわりも知ることができました。「おもしろさ」と「喜び」に加え、それぞれの「良さ」を見つけること、そしてより多くのお客様にそれらを届け、次につなげていくことが私の役割ということに日々、気づかされていきました。

気がつくと担当したいアーティストが増え、自ら営業活動に勤しむようになりました。音楽を知らなかった私が音楽を知ってもらうために仕事をしています。それだけ音楽には人を動かす力があるということを今も実感しています。今後もこの仕事に愛情を注ぎ、より多くの人に音楽を届けて感動してもらう、それこそが私の使命だと思っています。

大場高士プロフィール

おおば たかし
1976年生まれ。7年間のアルバイトを経て、2004年にキャンディープロモーション入社。
現在はPerfume、Aqua Timez、SCANDAL、Lil'B、back numberなどのライブを手掛ける。


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