ACPCの活動内容と取り組み音楽産業の発展に向けて

プロモーターの存在を
より知ってもらうために
大阪がまとまる、つながる意義

今回の問題が起きてしまったこと、またその後のグランキューブ側、行政側との交渉を経験して、改めてどんなことを感じたでしょうか。

僕がこの業界に入った時は、どちらかと言うと行政とか国に対してアンチの気持ちが強かったのですが、コロナのようなことが起こると、本当に公的なものにもきちんと向き合って、つながりをつくっていくことが重要だと痛感しました。今まではちょっとサボっていたというか、力不足だったところを非常に反省していています。もちろんACPCでは東京を中心に団体としてこれまでも必要なことに対応はしてきましたが、今回は大阪で起きた問題ですので、大阪のプロモーターがまとまって大阪府や大阪市に向き合っていかなくてはいけません。さらにはメディアとの関係性も大事になってきますから、報道を通して情報を出し、コンサートがどういう流れで成立しているのか、現場はどう動いているのか、広く知ってもらうことも必要になってきます。そういった意味では、キョードー大阪の齋藤さんを中心に在阪8社がまとまって、情報交換、情報共有しながら1つの目標に向かってガッと動いたことに、僕自身も刺激を受けましたし、心強かったですね。

上田普段は各社ライバルでもありますので、意外と横のつながりはありませんでしたよね。「たまには飯でも食おうよ」と集まっても、特に大阪では大きなテーマもなく(笑)。

本当に美味しいものを食べていただけで(笑)。

上田でも、今回の経験は形に残さないといけないし、この業界にいる若い人達にきちんと伝えていかないといけない。そんな中で齋藤さんが、各社の現場チームをつなげてくれたのは大きかったと思います。やっぱり僕らは一緒に音楽のいいところ、コンサートの素晴らしさをちゃんと伝えていかないといけないんですよ。会場には泣いているお客さんもいれば、笑っている人もいますが、皆さんコンサートを観て「明日からがんばろう」と思ってくれている。今まではそこまで思っていなかったですが、僕らはある意味で社会貢献しているはずだし、「コンサートができている世の中のほうが平和でいいじゃないですか」と声を大にしてアピールしていきたいと感じましたね。

齋藤データをまとめてみると、緊急事態宣言でコンサートがストップした1ヵ月、2ヵ月くらいの期間、大阪だけでも影響を受けたお客さんの数が数十万人、売上だと何百億になるんです。それだけ我々が経済の大事なところを担っていることを改めて考えなきゃいけないなと強く感じました。お客さんにとって、コンサートはアーティストがすべてであるのは当然ですが、1つのエリアでコンサートの現場をつくり、お客さんを迎え入れるという意味では、距離感はプロモーターのほうが近い部分もあります。だからこそ信頼関係が大事になるし、お客さんだけではなく、我々の背後には舞台監督から音響、照明のスタッフが多数いらっしゃって、家族を含めた生活にも直結しています。その積み重ねが何十万人、何百億という数字になって現れていることを自覚し、責任を持ってやっていかなくてはといけないと思います。

岡田行政に対してものを言うためには、団体じゃないと届かないですし、救済するシステムがあったとしても、東京のプロダクションに対するものになったり、じゃあ我々の存在はなんなんだとすごく考えさせられましたね。本当に日々勉強だと感じました。

長井僕はずっと東京にいる人間ですけど、音楽文化については関西に対する畏敬の念や憧れを持っています。公演数で言えば、確かに東京のほうが多いかもしれませんが、大阪も規模は大きいですし、関西が元気じゃないとないと、日本全国のコンサート業界もがんばっていけないんですよね。