会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

人生100年時代の「コト」の楽しさ

中西:その後、東京ドームでザ・タイガースのライブ(2013年12月)を観ていただきました。その時に石破先生が「これだけ幅広い年代の方が、こんなに集まるんだ」と驚かれていましたよね。確かに客席には若い人もいましたし、70代、80代の方もいらっしゃって。

石破:この時はもう議連ができていましたよね。お誘いいただいて、議連もメンバー何人かで足を運んだんですが、それはもう、大変な衝撃を受けました。我々よりも上の年代のご婦人、60代、70代、80代の皆さんが「ジュリー!」と叫んでいる姿に。

中西:若い世代の黄色い声援とは、また違うトーンで盛り上げてくださるんですよ(笑)。

石破:つまり音楽って、時代をポーンと越えちゃうんですよね。その時代の歌を聴くと、年代がそこへ戻る。だから60代、70代、80代のお姉様方も、きっと東京ドームで10代、20代に戻ったんだと思います。そこにはやはりすごい一体感がありましたし、高揚感もありました。この2つがキーワードのような気がしますね。60代、70代、80代の方々は、一体感や高揚感を感じる機会が多いとはいえないと思いますが、時間はあるでしょうし、お金も比較的持っていらっしゃるでしょう。人生が90年、100年になった時代に、そんな方々が何をしたら楽しいだろう、どんな生き甲斐を持って過ごすんだろうと考えたとき、「ああ、これなんだ」と思いました。

中西:業界側にとっても、上の年代の方をターゲットにしたコンサートは大きなテーマなんです。

石破:日本の高度経済成長期は、もちろんはるか昔に終わっているわけですから、後藤田正純(自由民主党衆議院議員)風にいえば、「モノからコトへ」ということになる。「コト」の楽しさみたいなものに経済の中心が移っていく。サービス業に、第三次産業に移っていく。一方で日本人はとにかくガムシャラに働いてきたところがあって、経済的にゆとりがあるのはいいのですが、「長い人生、これからどうしたらいいのか」となる面もある。つまりは日本の経済構造をどう変えるのかという話であり、「コト」の楽しさを東京や大阪などの大都市だけではなくて、地方に広げられたらいいなあと思いますね。

中西:議連の次のテーマとして、地方創生が挙げられると思うんです。ACPCは全国に会員社がいる組織なので、首都圏だけ繁栄しているという状況には絶対にしたくないんですよ。例えば会場の問題であれば、首都圏では民設民営のほうが幅広いライフスタイルに合わせた運営ができて、それこそ「コト」を活性化させられると思いますが、地方に関しては地方創生の一環として官民一緒に考えることが重要だと考えています。

石破:地方の会場がずいぶんよくなったなという気はするんですね。私の学生時代、我が故郷の鳥取市には鳥取市民会館しかなかった。一応ホールにはなっているのですが、900人しか入らない。それ以上のお客さんが見込まれるとなると、次は鳥取市民体育館や鳥取県立産業体育館。これらは2000人、3000人入るんですけれど、音響的にはいかがなものだろうということになるわけです。そんな中で25年くらい前、鳥取県立県民文化会館という2000人入る立派なホールができたんです。鳥取県は日本で一番小さな県なんですけど、そういう一級の音響設備を備えた1500~2000人規模のホールが、鳥取、倉吉、米子にある。だから地方でも会場はだいぶ揃ったという印象があるんです。むしろ東京のほうが足りないんじゃないでしょうか。

中西:ある意味で地方のほうが東京より会場が揃ってきているのは事実だと思いますが、これからは「体育館」ではなく、多目的アリーナをつくっていただかないと、スポーツとライブ・エンタテインメントの両方で利用できないというのが我々の考えなんです。その問題に取り組むために、川淵(三郎)さんが代表理事会長を務めていらっしゃる日本トップリーグ連携機構とECSA(エクサ)という新しい団体を立ち上げました。

石破:アリーナとなると、11tトラックが会場の敷地や館内に入っていけて、コンサート用の機材の搬入が容易にできることが大切ですね。

中西:そんな専門的なことを石破先生から発言していただけるとは(笑)。ありがたいです。

石破:マディソン・スクエア・ガーデンの視察を勧められてニューヨークまで行きましたが、本当にすごいですね。今の日本では適わない。アメリカの民主党大会も共和党大会も開催するし、スポーツもできれば、パーティーもできる。もちろんライブもやっているわけですよね。

中西:いつもは氷が敷いてあるんですよ。

石破:えっ? どういうことですか。

中西:基本はアイスホッケー場なんです。昼は氷を敷いてアイスホッケーの試合をして、夜はフロアに代えてバスケットボールの試合をする。最初からそういう使用を考えて、つくってあるんです。

石破:いかにして24時間稼ぐか、ということですね。音響や照明を含めて、やはりすごい文化だと思いましたね。日本の地方にも立派な会場はできたんですが、そこで何をやっているかといえば、民謡大会やカラオケ大会だったりします。それはそれでいいのですが、それだけではもったいない気持ちもあります。運営のノウハウみたいなものが、まだ未成熟なんでしょうね。

中西:運営だけではなく、会場のプランニングから民間が入ることで、ずいぶん変わると思います。アリーナから地域を活性化していくというやり方は、可能性として充分あると思うんですよ。


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