会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

フェスと単独コンサート「入口」としてのアイドル

ポップなアーティストには、ライブ・エンタテインメントの別の可能性を感じます

清水直樹

清水:一方で圧倒的にシェアを増やしているのは、やっぱりフェスティバルだと思います。世界的に見ても、以前はここまでの数は存在しなかったのですが、ここ数年はヨーロッパ各地にあって、アメリカでも以前はフェスがなかった地域で行われるようになりました。アジアも然り、ですよね。今やもう夏になると毎週、世界のどこかでフェスが開催されています。ライブ・エンタテインメント全体の中でも、そのシェアは相当大きくなっているでしょう。
 最新事情でいえば、ロックではなくダンス系、EDM(Electronic Dance Music)のフェスティバルが世界中でブームになっていて、それこそヨーロッパ、北米から南米までも広がっています。アジアでは日本よりも先に韓国で2万人、3万人のフェスが誕生しています。

高橋:EDMになると、ますます音楽を聴くというより、参加する人達が自分で楽しむ要素が強くなっていくでしょうね。現時点でも、フェスティバルではなく、自分の好きなアーティストの単独コンサートに行きたいというお客さんもいると思うんです。だからプロモーター側が、このアーティストはフェスに向いているのか、単独コンサートがいいのか、見極める必要があるということでしょう。

清水:フェスに出演することでお客さんを増やして、次に単独につなげるのが、プロモーターとしては理想ですよね。

高橋:最終的にはアーティストが、それだけのいいものを持っているのか、だと思います。フェスで「今度は単独でも見たいね」と思わせるだけのステージができるかどうか。逆にがっかりさせちゃう場合もあるじゃないですか(笑)。

清水:SUMMER SONICでは、1年目にミューズ、コールドプレイなどが新人として出演しているんですね。彼らが今やヘッドライナーになったり、単独でもアリーナ・クラスでできるまで成長したことを考えると、今後さらに動員力を伸ばしていく可能性は充分あると思っています。ただし、広くロック・バンドにとって今、チャンスをつかみやすいかといえば、難しくなっていることは確かです。
 最近、動員力があるのは、よりポップなアーティストになっています。ワン・ダイレクションだったり、レディー・ガガやテイラー・スウィフトだったり。ブルーノ・マーズもそうです。

高橋:ロックではないですよね。やっぱり「観て楽しむ」アーティストが強い。

清水:ポップなアーティストやアイドルには、ライブ・エンタテインメントの別の可能性を感じるんです。彼らのオーディエンスは、すごく若いんですよ。ワン・ダイレクションであれば、小学生もいますからね。今まで洋楽を聴いていなかった層が、音楽に興味を持つきっかけになっているんです。
 昔でいえばベイ・シティ・ローラーズから入ったファンが、洋楽のマーケットを広げたように。だから決してアイドルを否定せず、そこから先にロック・バンドや別のアーティストのコンサートにも足を運んでもらうようにするのが、プロモーターの役割だと思います。


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