会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

団体協定への道程

内野二朗会長(1995~2001年)

永田:JASRACとの交渉は、井上さんが理事長だった時代に、一度実験的に団体協定を結ぶところまで進んだんです。ところが当時のJASRACの事情もあって、一方的に実験中止を言い渡されました。井上さんは、その責任をとる形で95年以降は副会長になるんですが、会長には三顧の礼でキョードー東京の内野二朗さん(オデッセー、ミュージックリーグなどの代表も務める)をお迎えしました。内野さんに会長になっていただいたことは、ACPCの歴史の上で本当に大きかったと思います。内野さんへの信頼は音楽業界全体に行き届いていましたし、JASRACとの問題も、内野さんのお陰で他の音楽関連団体から協力を得られることになり、粘り強く交渉を続けられたのだと思います。

宮垣:団体設立時から、キョードー・グループにどのように関わってもらうか、僕らも色々考えていたんです。キョードー東京、キョードー大阪から役員には入ってもらっていましたが、ちょっと微妙な距離感があったことは事実でしたね。

山崎:ポピュラーからクラシックまでを含めて、海外アーティストの招聘プロモーターが集まったJCPA(ジャパン・コンサート・プロモーターズ・アソシエーション)という任意団体があって、キョードー東京も加盟していたんです。だからACPCとは、一定の距離を置いていたんじゃないでしょうか。当時、僕はキョードー東京で要職に就いていたわけでもありませんが、ACPCのことはよく知りませんでしたからね。

宮垣:当時だったら、知らなくて当然でしょう。

山崎:グループの歴史を改めてお話すると、キョードー東京がキョードー大阪を中心に、全国にフランチャイズシステムを作りましたが、それは主に招聘した海外アーティストのディストリビューションをするためのものでした。だからJCPAの一員でいることは当然だったわけですが、そんな中で内野さんが始めたのは、そのシステムを使って邦楽のアーティストをプロモートすることだったんです。

宮垣:正直、僕らにとっては脅威でしたよ(笑)。

山崎:宮垣さん達からすれば、海外アーティストのプロモーターは、外国人を乗せた黒船のように見えたでしょう(笑)。コンサート・ビジネスが日本で始まった当初は、欧米のアーティストこそ本物であり、日本の音楽はそのコピーに過ぎないという意識が、音楽ファンの間にもあったのは事実だと思います。それが日本人にも素晴らしいアーティストが登場するようになって、フォークやロックのマーケットが大きくなっていったわけです。宮垣さんや井上さんが、全国でコンサートを盛り上げている。時代の流れを、内野さんはよく見ていて、ACPCとシェイクハンドしようと思ったんじゃないでしょうか。

永田:内野さんはどんなアーティストでも、どんな音楽でも、公平に判断して、分け隔てなく人付き合いをする方でしたよね。でも、JCPAの話には後日談があるんですよ。以前の使用料値上げの時にACPCには諮問もなかったと話しましたが、実はJASRACはJCPAに諮問していたんです。「じゃあ、あの時の値上げにOKを出したのは内野さんだったんですか?」と井上さんが笑いながら内野さんに詰め寄っていましたよ(笑)。

山崎:私利私欲がなく、業界全体のバランスをよく考えている人だったことは確かです。それとACPCが社団法人になったことも、内野さんの判断の中では大きかったと思います。国が認めるのも、JASRACが窓口として考えるのも、コンサート業界の中ではACPCであるという流れになりましたからね。

「ACPCが団体協定を締結している意味や、そこに至る道程を、若いスタッフに伝えることは重要だと思います」

永田友純

1955年生まれ。2001〜08年まで会長を務める。
現在はACPC監事


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