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すべてはライヴの中にある

「札幌市民会館 最後の日」と清志郎さん若林良三(ウエス常務取締役)

「navi ARENA」では今後、ACPCの役員だけではなく、広く会員社の方々にも原稿をご依頼していこうと思っております。連載開始に際して寄稿してくださったのは(株)ウエスの若林良三さん。若林さんが企画に携わったイベント「札幌市民会館 最後の日」と今年5月にご逝去された忌野清志郎さんの思い出、そしてそこから見えてきたコンサート・プロモーターの未来について綴っていただきました。

 今から約30年前、高校時代にラジオから流れてきた「雨上がりの夜空に」を聞いた瞬間「スゲー!何じゃこれは!」という衝撃が走りました。
 その数年後に僕はコンサートのアルバイトを始めたのですが、当時のロックコンサートと言えば、お客さんにとってステージに詰め寄ることが最大のリスペクトの表現で、客電が落ちるやいなやステージに殺到して来るのが当たり前でした。
 中でも、RCサクセションのコンサート(特に札幌市民会館での)は最も警備が大変なコンサートの一つでした。お客さんは座席を飛び越えて前に駆け出すわ、ステージに物は投げるわ、さらに忌野清志郎さんはオケピに降りてお客さんを煽るわで、どんどん前方に人が溜まりコンサートが中断になりそうなこともありました。
 警備をしながら知ったのは、コンサートとはステージから何かを伝えようとするアーティストの横顔、そしてそれを受けて喜ぶお客さんの顔を両方見ることができる最高の場所であるということでした。それが自分の仕事の源でした。

 2006年、その大好きだった札幌市民会館が耐震構造の問題で取り壊しになるというニュースが新聞の一面に取り上げられました。
 すぐに最終日のスケジュールを押さえ「最後に何かやろう!」と企画に取りかかりました。イメージはTHE BANDの「The Last Waltz」のパクリ(笑)。札幌市民会館にゆかりのあるアーティストのオムニバスコンサートで、ハウスバンドをイメージした固定メンバーによる演奏に、複数のヴォーカリストが入れ替わって歌うというコンセプトでした。
 当時、偶然札幌に来ていたキーボードプレイヤーの斎藤有太君に飲み屋でその話を持ちかけると、二つ返事でOK。その場ですぐバンドメンバーに連絡したところ、本当に奇跡的に全員のスケジュールが合ったのです。ゲストヴォーカルも奥田民生さん、CHARAさん、佐野元春さん、山崎まさよしさん、仲井戸“CHABO”麗市さん、土屋公平さん、Leyonaさんと次々に快諾してくれました。
 実は、この企画で真っ先に浮かんだのは忌野清志郎さんだったのです。しかし、当時彼は喉頭癌の治療中。「歌ってほしいと頼むことなんかできない。まずは治療に専念してもらおう」と、そっとその思いをしまい込みました。
 そのライヴのリハを東京のスタジオで行っていた時のこと。無事初日が終わったところにスタッフが飛んで来て「清志郎さんがそのコンサートには出れないかな? 歌っちゃダメ?」という連絡が来たと僕に伝えました。
 もう僕とメンバーは大興奮! すぐに翌日のリハに向けてのスタンバイに取りかかりました。
 翌日BOSSがやって来てリハが始まった瞬間、療養中とは思えないバリバリの歌声がスタジオ中に響き渡りました。
「これは凄いことになるぞ!」と確信しました。

 そして迎えた2007年1月31日、イベント「札幌市民会館 最後の日」開催。お客さんには、清志郎さんが出演することは事前に発表していませんでした。  CHABOさんが「トランジスタラジオ」のイントロを弾き出した瞬間、舞台下手よりマントをひるがえしながらBOSSが登場。本当に地響きのような歓声が起こる中、3曲をバッチリ決めてくれました。その中で、「今日の僕があるのもすべて市民会館のおかげです」と何度もMCで言っていたことが印象的でした。

 しかし、残念ながら札幌での清志郎さんが歌うステージはそれが最後となってしまいした。
 そして今年の5月2日、惜しくも清志郎さんは新しいブルースへの旅へ出発しました。

 コンサート・プロモーターの仕事とは、ステージから音楽を通じて何かを伝えたいアーティストと、それを見に来てくれるお客の両者を結びつけること。それには、その舞台としての会館がないと何も始まりません。

 最近では各地の会館が取り壊しになり、音楽の発表の場が減ってきています。しかし、ライヴを提供し、やり続けることが文化になると僕は信じています。

 清志郎さんを通じて教えてもらったこと、それはすべてライヴの中にありました。

若林良三氏
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