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ハイブリッド化するライヴの担い手

 今やライヴ・エンタテインメントの担い手は、「専業」コンサート・プロモーターだけではなくなりつつあります。レコード会社がライヴ部門を持ち、ITやアパレル業界からも参入する社もあります。こういった傾向が私達に与える影響を探るため、3社にお話を伺いました。

エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社

永田悦久氏

エイベックス・ライヴ・クリエイティヴは1990年11月に設立。当時、エイベックスがダンス・ミュージックを中心としたレコード会社であったことから、ライヴ部門もクラブでのDJイベントや洋楽のアーティストの来日公演、楽曲のプロモーションを行なうことが主な業務だったそうです。その後、エイベックスの契約アーティストが急激に増え、J-POPが主流になっていく流れの中で、邦楽アーティストのライヴを手掛けることが増加。4年前にはグループの構造改革があり、いわゆるエンタテインメントの総合企業を目指すことに。現在は日本唯一の国内巡回型野外フェス「a-nation」などだけではなく、ステージ・エンタテインメント全体まで手を広げ、一昨年から始まった「BLUE MAN GROUP IN TOKYO」では専用劇場(インボイス劇場)も設立。現在もロングラン興行が続いています。エイベックス・グループの一角を占める会社として、同社代表取締役社長・永田悦久さんが目指すヴィジョンとは? 荒木伸泰ACPC常任理事が聞きました。

最高のクリエイティヴ集団

荒木: 御社ではチケットの配券から運営回りまで、ライヴに関するすべてを手掛ける場合もあるのでしょうか。

永田: 「BLUE MAN 〜」では弊社が配券元になり、プレイガイドの3社に参加いただいて運営しています。そういった興行のベーシックな部分も手掛けるコンサート・プロモーターとしての要素を持ちながら、主軸になっているのはプロデュース・ワークだとお考えいただければいいと思います。ただし、グループ自体がコンテンツ・ホルダーであり、川上から川下までを全部内包してやっていくとすると、これは相当なスタッフの数が必要になってきますので、現実的には難しい部分も出てきます。また、全国展開していくコンサートであれば、すべて自社で手掛けるのは当然不可能ですので、各エリアのプロモーターの方々のお力をお借りして、一緒に仕事をさせていただいています。

荒木: 最近は「360度契約」という言葉が話題になっていますよね。CDやアーティスト・タレントのマネージメント、コンサートからグッズ、ファンクラブまで包括した契約をアーティストと結ぶという形をエイベックスも考えているのでしょうか。

永田: ライヴに関しては、外部プロダクションがマネージメントを手掛けている例はありますし、ツアーの制作もそのアーティストと長い付き合いがある外部の会社が担当している場合もあります。その場合は、弊社でチケット販売をやったり、スポンサーと結びつける役割をしたり、プロデュース・ワーク以外の協力をしています。色々な場合があって「全部うちでできなければ、契約しません」という方針があるわけではありません。ただし、コミュニケーションの問題など諸々を考えると、エイベックス所属のアーティストに関しては、コンサートもグループ内でできたほうがマネージャー達も気分的に楽な部分はあるでしょう。
 「スリー・シクスティ」という概念は、LIVE NATIONのここ数年の契約スタイルから、海外でいわれ出したことですからね。弊社は90年設立なので、その当時は全く意識のしようがありませんでした。ダンス・ミュージックのアーティストやDJは、当時のプロモーターがどこも扱っていなかったので、自社でツアーも始めて、マネージメントもやらざるを得なかったというのが実情です。それと今でもクリエイティヴに関しては、自分たちの手で手掛けるため、「最高のクリエイティヴ集団になろう」という考え方が生まれたのかもしれません。

インタビューの様子
不況下の「根本的な強さ」

荒木: 東京工科大学のACPC寄附講座では永田さんにも講師を務めていただきましたが、コンサートの収支に関する非常に細かい数字まで公開してくださったので、学生にとってもリアリティがあったと思います。あの時、a-nationもチケット収入以外のグッズ売上やスポンサーの協賛金で黒字化している—とおっしゃられたのが印象に残っているのですが、やはり不況になってくると企業の協賛にも影響が出てきますか。

永田: コンサートの場合、先に先に準備を進めるじゃないですか。だからスポンサーになっていただいている企業にも相当前からお願いをしていて、例えば今年の夏のイベントのものはある程度決まっているわけです。ですから上期まではあまり心配はしていません。興行関係の景気はこの下期から響いてくるんじゃないかと思っています。

荒木: 逆にうちが手掛けているようなフォーク系のアーティストには不況はそれほど影響がないかもしれません。

永田: なるほど。最初からチケットの売行で勝負ですからね。安定した支持も得ているでしょうし。

荒木: ドームや武道館はありませんが、1000人、500人のお客さんが必ず待ってくれていて、ちゃんとペイできますからね。年間40本、50本くらいは全国を回れますし。

永田: そういうコンサートは大きく崩れないでしょうね。エンタテインメントが不況に強いといわれているのはそういうところで、経済的に辛くても大好きだからこの人のライヴは行く、この人のレコードは買う—というのがファンの心理ですから。そういう根本的な強さは大事にしたいですね。エイベックスでも、a-nationだけを見ていると、今が旬のアーティストばかりが集まっているように感じると思いますが、実際にレコード会社として近年契約しているアーティストは、他のレコード会社から卒業したようなアーティストも多いんです。大人をターゲットにしたエイベックス・イオというレーベルも立ち上げましたし。

「会場の問題」こそ共通のテーマ

荒木: 今後ライヴ・エンタテインメントがもっと伸びていくためには、何が大事だとお考えですか。

永田: まだまだ伸びる余地は当然あると思いますが、もう少しインフラ的なことが整わないと難しい側面もあるでしょう。特に会場の問題ですね。日本には民営のホールがなくて、ほとんど公営じゃないですか。公営であるがゆえの規制がたくさんありますから。終演時間の問題もそうですし、飲食もそうですし、火薬の使用など運営面でも規制が多い。使い勝手が悪くて、すべてがコスト増につながり、ライヴのクオリティのダウンにつながりかねない。

荒木: 小さいスペースであれば、教会やギャラリーなどのフリースペースとか、まだ選択肢がありますが、公営も民営も含めて、一般のホールだと本当に難しい。これはACPCの会員社、共通のテーマですね。

SUMMER 2009 VOL.03
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